バッティングにおける悪いスイングのひとつとしてドアスイングが挙げられます。
ドアスイングを矯正するにはインサイドアウトスイングを身につける必要がありますが、ただ『バットを内側から出すことがインサイドアウトスイングだ!』と思う人も多いのではないでしょうか?
しかしその考えは間違っており、インサイドアウトスイングを正しく理解していないと、ドアスイングを矯正できるはずがありません!
この記事では、ドアスイングを掘り下げて説明した上で、ドアスイングを矯正するためのインサイドアウトスイングのやり方やそのコツについて解説します。
ドアスイングとはどんなスイング?
ドアスイングは悪いスイングの代表格です。ドアスイングと言うくらいですから、スイングを『ドア(door)』に例えているのが特徴です。
一般的に言われるドアスイング
図1
図1は一般的に言われるドアスイングを示したものです。腕が伸びきった状態のスイングですね。
腕とバットが一直線になり、ドアのような動きからドアスイングと呼ばれています。
しかし昨日今日野球を始めた人ならともかく、それなりに経験を積んだ選手は、まずこんな振り方はしませんよね。
ですので、こういったスイングのみをドアスイングと定義するのは安易なのです。
これもドアスイングです!
図2
図2を見て下さい。図1のスイングに比べればバットが内側から出てきていますが、これも十分ドアスイングです。
両肩を結んだ線とバットの角度に注目すると、平行になっています。ちょうど一枚のドアに収まるような形に見えることから、これもドアスイングなのです(図3参照)
図3
ドアスイングが悪い理由
なぜ、ドアスイングは悪いスイングなのでしょうか?
それは溜めが無い状態でバットを振っているからです。ドアスイングは、バックスイングで捕手側に捻った体を戻すと同時にフォワードスイングに入り、バットを出してしまいます。
これでは体の捻り戻しによる力を利用できず、ただ体を回してバットを振っているだけなんです。これではスイングスピードを速めることは出来ませんし、力強い打球も打てません。
ドアスイングになってしまう原因
次にドアスイングになってしまう原因を解説します。大きく分けると以下に分けられます。
・バッティングの間が取れていない
・グリップを先に抜いてしまう
・トップが浅い
バッティングの間が取れていない
バックスイングを終えて(トップを作った状態)からフォワードスイングに移るときに、『間(ま)』が取れていないとドアスイングになってしまいます。
- 打者が投手側の足(右打者の左足、左打者の右足)をステップして、地面に足が着きます。
- その後に、バックスイングで作った体の捻りを解いて、トップを崩しフォワードスイングを開始します。
1と2の間に『バッティングの間』が存在します。バッティングの間が取れていないと、投手の投げるボールに合わせるためのタイミングを微調整できません。
そうすると、ステップした投手側の足が地面に着く前にフォワードスイングを開始することになります。結果的に、両肩を結ぶ線とバットが平行に出ることになりドアスイングが完成してしまうのです。
グリップを先に抜いてしまう
フォワードスイングに入るとき、体の捻り戻しをする前にグリップを抜こうとバットを振ればドアスイングになってしまいます。
体の捻り戻しにより、投手側の肩(右打者の左肩、左打者の右肩)を開き、インパクトするために体は投手に正対させますよね。
このとき先にグリップを抜こうとすると、必然的にグリップは体の前に来てしまいます。その状態でスイングすれば、両肩を結ぶ線とバットが平行になってしまうのは当然です。
ひとこと
グリップを先に抜くことを『バットを内側から出す』と単純に考え、ドアスイングではないと考えるケースを多く目にします。それ自身がドアスイングだと気付かずに。
さらに怖いのは、ドアスイングの矯正と称してグリップを先に抜こうとする練習を行うことです。練習すれば練習するほどドアスイングになっていきますので、どんどん打てなくなります。
以下の記事に、そんな怖い間違った練習方法を書いておきました。参考にどうぞ。
参考記事
トップが浅い
トップが浅いとは、作ったトップが体の近くにあることを指します。すなわち体の近くにグリップがあるわけです。
その状態でフォワードスイングに移れば、必然的に両肩を結ぶ線とバットが平行になってしまい、ドアスイングになってしまいます。
インサイドアウトスイングのやり方
インサイドアウトスイングのやり方を説明します。
インサイドアウトスイング
振り始めは回転半径が小さく、徐々に回転半径が大きくなるスイング
かつ
体の捻転を利用し、しっかりバットのヘッドが溜められたスイング
振り始めは回転半径を小さくすることがスイングスピードを速めるコツです。理由は慣性モーメントを小さくできるからです。反対に慣性モーメントが大きくなるとスイングスピードは遅くなります。
慣性モーメントとは?
「回転しにくさ」の程度を示す量のこと。回転半径に比例して大きくなる。
・回転半径大 → 慣性モーメント大 → 回転し辛くなる
・回転半径小 → 慣性モーメント小 → 回転しやすくなる
図4
図4はインサイドアウトスイングを示したものです。見て分かるとおり、投手側の腕(右腕)がしっかり伸びていますね。
これは体の捻りを解いて(これを捻転と言います)体が投手に正対しても、バットのヘッドを残しているからです。
この体の捻りが戻る力を利用して打つことが、捻転を利用して打つということです。これが出来れば自然とインサイドアウトスイングになります。
一連の流れを解説します。
インサイドアウトスイング
① 右打者なら右足、左打者なら左足を軸にして、バックスイングを行いトップを作る。このとき前足(右打者なら左足、左打者なら右足)をステップする。
② トップの状態を維持しながら、ステップした前足を地面に着地させる。
③ トップで作った腰の捻じれを解き、フォワードスイングを開始する。
④ 体の捻りを解いてもトップの状態は可能な限り維持する。
⑤ 体の捻り戻しを行えば、投手側の肩と腕は自然に出てくる。このときでもバットのヘッドは残すこと。
⑥ インパクトに向けて捕手側の腕によりバットを押し出す。
⑦ フォロースルーで自然に手首が返る。
ドアスイングの矯正方法
ドアスイングを矯正方法するためには、インサイドアウトスイングを身につけることです。
そのためには以下のポイントに注意しましょう。
・バッティングの間を取れるようにる
・グリップを先に抜くのではなく、自然にグリップが出てくるように体の捻り戻しを利用する
・トップを深くとる
間違いだらけのドアスイング矯正方法
ドアスイングを矯正するために、以下のことを意識させることがあります。
・バットを最短距離で出す
・ヘッドが一直線になるように振る
ハッキリ言いますが、この考えは間違いです!
図5
図5をご覧ください。これはグリップを先に抜いてバットを最短距離で出しています。
しかし左肩の開きと同時にグリップを抜いていますので、体の捻転を利用できておらず、溜めの無いスイングになってしまっているのです。
『バットを最短距離で出す』って何となくインサイドアウトスイングに感じるますが、実はドアスイングになってしまう悪い振り方なんですよね。
とにかくバットを内側から出せば良いんでしょ?
と思ったら大間違いなんです。
まとめ
以上のことをまとめます。
・両肩を結んだ線とバットが平行になるスイングもドアスイングである!
・ドアスイングは溜めのないスイングだからダメ!
・ドアスイングを矯正するためにはインサイドアウトスイングを身につけること!
・インサイドアウトスイングのコツは体の捻り戻しにより、溜めを作ること!