野球におけるセカンド(二塁手)はキャッチャー・ショート・センターとともにセンターラインを形成する重要なポジションです。
それだけにセカンドはやるべきことが多く、豊富な運動量と幅広い知識が要求されます。
この記事では、そんなセカンド(二塁手)の役割と必要な能力について解説しつつ、経験者の立場から体験談も書きたいと思います。
セカンドの役割
セカンドの役割は多岐に渡り、主なものは以下の通りです。
- 打球の処理
- ベースカバー
- カットマン
- ピッチャーに対し牽制球のサインを出す
- 外野手に対し投球のサインを出す
打球の処理
セカンドは守備範囲が広大であり、センター前からファースト後方までをカバーします。
また、ダブルプレーに参加することが多いので『捕る・投げる』という基本がしっかりしているのは当然のこと、トス・グラブトス・スナップスロー・ジャンピングスローといった多彩な送球動作ができる器用さも求められます。
それゆえ捕球も「ただ捕ればいい」というわけではなく、送球動作に適した捕球方法を身につける必要があります。
ベースカバー
ベースカバーは一塁ベースまたは二塁ベースを担当します。
ランナーの順路を考えれば必然的にベースカバーに向かう頻度が多くなり、1試合トータルの運動量は野手トップクラスです。
ランナー二塁(もしくはランナー1,2塁)の場合、三盗を防ぐためにショートと交互に二塁ベースに入り二塁ランナーを牽制する役割を担いますが、投球毎にすべきプレーですのでこれまた大変です。
カットマン
センター方向からライト方向へ飛んだ打球に対し、カットマンとして各送球塁に適した位置に入ります。
センター方向からレフト方向へ打球が飛び、セカンドが二塁ベースに入りショートがカットマンになる場合、セカンドはショートへ位置やカット・ノーカットの指示を出します。
ピッチャーに対し牽制球のサインを出す
ランナー二塁(もしくはランナー1,2塁)の場合、左投げのピッチャーに対してセカンドが二塁牽制球のサインを出します。
ちなみに、ピッチャーがピッチャーが右投げの場合はショートが二塁牽制球のサインを出します。
このとき出すサインとは、『牽制球の種類(普通・一発など)』『セカンド・ショートのどちらが入るときに投げるのか』を含めたものが一般的です。
セカンドが入る普通の牽制球
セカンドが二塁ベースに入る ⇒ 離れる→ショートが二塁ベースに入る ⇒ 離れる ⇒ セカンドが二塁ベースに入る ⇒ 牽制球を投げる!
ショートが入る一発牽制
ショートおよびセカンドは二塁ベースから離れる ⇒ ショートが二塁ベースに入る ⇒ 牽制球を投げる!
ちなみに一発牽制とは、セカンド・ショート・ピッチャーがそれぞれ二塁ランナーを油断させるような動きをし、一発目の牽制球のベースカバーでアウトを狙うプレーです。
細かいプレー内容としてはキャッチャーも含めて組織的にやることが一般的ですが、詳しく知りたいという方は以下の記事を参考にして下さい。
外野手に対し投球のサインを出す
これはキャッチャーがピッチャーに出す投球内容(球種・コース)を伝えるサインを見て、それを外野手(セカンドの場合、センター&ライト)に伝えるためにサインを出すことです。
次に投手が投げるボールの情報を野手が共有することで、打球が飛んできそうなコースをあらかじめ予測して守ることを目的としてます。
セカンドに必要な能力
セカンドに必要な能力としては、『広い守備範囲』『的確な判断力』『俊敏性』『タフさ』が挙げられます。
広い守備範囲
セカンドは広大な守備エリアを担っているため、広い守備範囲が望まれます。そのためには一歩目の早さ、打球に追いつく脚力、巧みなグラブ捌きが求められます。
速い打球に素早く反応するためには、一歩目を早く踏み出せるかどうかにかかっており、体の重心の使い方がポイントになります。
人体の重心はへそ付近にありますが、重心の位置は体を動かすことによって変化します。具体的に言えば、腰を落とせば重心が下がり、腰を持ち上げれば重心は上がります。
そして、この重心にはスポーツ選手にとって需要な性質があります。
- 重心が高いほど不安定になる
- 重心が低いほど安定する
言い換えると、重心が高いと体は動かしやすく、重心が低いと体を動かし辛くなるのです。
これを守備に応用すると、打者が打球を放つタイミングに合わせて軽くステップしたり小さくジャンプすることで重心を高く保ち、動きやすい状態を作ることにより一歩目を早くすることができます。
一歩目が遅い選手ほど最初から低く構えて重心を下げてしまい、わざわざ動き辛い状態を作り出してしまうのです。
的確な判断力
セカンドはグラウンドの中心付近に守っていますので打球がよく飛んできますし、ボールに触れる機会が非常に多いポジションです。
また、ボールに触れない場合(ベースカバー・カバーリングなど)でも様々なプレーに関与することが多いので、的確な判断力が求められます。
例えば、一二塁間にゴロが転がった場面。
セカンドは自分が打球を処理するつもりでボールを追いかけます。しかし、飛び出したファーストがゴロを捕球したとします。
このときセカンドがとる行動は一塁ベースに入ることです。しかし、ピッチャーが一塁ベースに入ろうと向かってきました。
これを見たセカンドは一塁ベースカバーをピッチャーに任せ、ファーストの送球ミスに備えたカバーに向かいます。
このようにセカンドは都度変わる局面に対応できるよう、素早く的確な判断ができなくてはいけません。
俊敏性
セカンドは状況に合わせたプレーをする場面が多いため、高い俊敏性が求められます。
例えば、ノーアウト一塁で打者がバントの構えをしている場合。
試合展開にもよりますが、こういったケースでは必ずしも打者がバントをするわけではありません。バントの構えからヒッティングに切り替える(バスター)こともありますし、一塁ランナーを走らせてヒットエンドランまたはランエンドヒットを仕掛けてくることもあります。
これらに対応するためにはしっかり相手の動きを見定め、素早く動かなくてはいけません。
タフさ
セカンドは一塁ベースと二塁ベースの近くに守っていますので、それらのベースカバーならびに送球に対するカバーリングを行います。
それゆえその頻度が多く、セカンドにはタフさも要求されます。
一塁送球(牽制球含む)の度にファーストの捕球ミスやファンブルに備えて一塁に向かいますし、長打・単打問わず外野に打球が飛べば必ずセカンドには役割が発生しますので動かねばなりません。
1試合フルに出場するとかなりの運動量になりますので、心身ともにタフでなければ務まらないポジションと言えるでしょう。
セカンドは「守備が下手な人」が守るポジション?
プロ野球をはじめとする硬式野球では、『セカンド=守備の上手い人が守る』ことが一般的ですし、野球ファンなら当然のことだと思われるでしょう。
実際この記事で解説しているとおり、セカンドには多くの役割がある難しいポジションですから守備が上手い人でないと務まりません。
しかし少年野球や草野球など、野球レベルが低くなるとセカンドに未経験者をはじめとする「守備が下手な人」を起用することが増えます。
これはなぜでしょうか?
まず、守備をこなすためには「ボールを捕る・ボールを投げる」ことができなくてはいけません。
内野手の場合、強い打球が飛んでくるサードや広い守備範囲・強い肩が求めらるショートは守備の下手な人には難しいポジションです。
また、内野ゴロをはじめ多くの守備機会に参加するファーストは、ボールを捕ることができないとアウトにできませんので、守備の下手な人には務まりません。
外野手の場合、簡単なフライすら捕れないとなると全て長打になってしまいますし、野球場ではないグラウンドでプレーする機会が多い少年野球や草野球では打者がそのまま本塁に帰ってくることも珍しくなく、ある程度ボールを捕れる人が守った方が無難でしょう。
そうなると消去法でセカンドが残るのです。
セカンドは一塁に近いことから、ボールを遠くに投げることができなくても何とかなりますし、ボールを上手く捕れなくても一塁送球が間に合う可能性があります。
それに野球レベルが低くなるほど要求される連係プレーが少なくなりますし、二塁ベースカバーやカットマンの役割はショートがフォローすることもできます。
このような理由から、少年野球や草野球では守備の下手な人がセカンドを守るケースが多くなるのです。
ただし、ここでいう守備の上手い人とは最低限の「捕る・投げる」をこなせる選手、守備の下手な人とはそれすらおぼつかない選手のことを指しています。
ある程度「捕る・投げる」ことのできる選手が集まったチームでは、優先的にセカンドに守備が上手い人を起用するケースが圧倒的に多いです。
それはチームが目指すべき野球レベルが高くなればなるほど、セカンドが果たすべき役割がクローズアップされるからであり、高校・大学・プロ野球ではセカンドに守備が上手い人が起用されるのは当然のことと言えるでしょう。
経験者から一言
私は小学4年から野球をはじめ、少年野球・中学野球・高校野球・大学野球・草野球と野球を続けてきましたが、その中でもセカンドで試合に出場したのは僅か数試合です。
具体的には高校野球で数試合、大学野球で1試合の出場経験だけです。
高校入学後はサードを希望して練習をしていましたが、ある日、監督の命令でセカンドを守ることになったことがきっかけです。
それまでサード・ショートの経験はあったので、
セカンドなんて余裕だろ・・・
と思っていた私ですが、はじめて守るセカンドの守備位置から見渡す景色に驚いたことを覚えています。三塁側から見る景色と一塁側から見る景色って全然違うんですよ。
セカンドゴロでも捕球位置によってゆっくり投げたり素早く投げたりと配慮が必要であり、ダブルプレーを狙って二塁へ送球する際のターンの方向など、セカンド独特の動きも多いので慣れるまで結構大変でした。
セカンドは打球がどこに飛んでも何かしらの役割が発生しますので、それまで守っていたサードに比べて頭と体を使う頻度・量が膨大に増え、心身ともに負担の大きいポジションだと実感しましたね。
その分、野球について詳しくなりましたし、以後コンバートでキャッチャーになった私には大切な経験になったと感じています。