野球におけるセンター(中堅手)は外野手の中で唯一『センターライン』と呼ばれるポジションです。
センターは本塁と二塁を結んだ直線付近に守りますので、レフトやライトとは異なる動き方が求められます。
この記事では、そんなセンター(中堅手)の役割と必要な能力について解説しつつ、経験者の立場から体験談も書きたいと思います。
センターの役割
センターの役割を説明します。
- 打球の処理
- 打球処理のバックアップ
- 送球のバックアップ
打球の処理
センターはレフト方向(左中間)からライト方向(右中間)まで広い範囲の打球処理を担います。
それだけに打者がバットのどこで捉えたかを見る ”目” と、打球音を聞く ”耳” を使って、打球の質を見極める必要があります。
レフトやライトに比べて癖のある打球(フライ)が少なく、比較的素直な打球が多いことから『守りやすい』と感じる選手もいるでしょう。
それでも左中間に飛んだライナー性の打球はレフト方向へ、右中間に飛んだライナー性の打球はライト側へ切れていき、追っているセンターから逃げていくような打球になります。
それを読んだ上で、落下地点に先回りすることが大切です。
打球処理のバックアップ
センターはセカンドやショート、レフトやライトに飛んだ打球に対するバックアップを行います。
長打や塁上にランナーがいる状況でレフトやライトが打球処理する場合、送球塁の指示を打球処理する選手に伝える役割も担います。
送球のバックアップ
センターは二塁送球や二塁牽制球のバックアップを担当します。
野球の試合では二塁送球の発生頻度は高く、また様々な方向(三塁側・本塁・一塁側)からの送球がありますので、しっかりと送球ラインに入ったうえで、ある程度距離をとって備えなくてはいけません。
そのためセンターはバックアップの頻度が多いとともに多様な動き方が求められますので、俊敏性と正確な状況判断が必要となります。
センターに必要な能力
センターは広い左中間・中堅・右中間を守備範囲にするとともにバックアップにおいても移動距離が長いため、素早く捕球地点に向かう脚力が必要です。
センター後方も広く(どんな球場でも120mはある)、打球を後逸してしまうと塁上のランナーだけでなく打者走者まで本塁に帰ってきてしまいます。
それを防ぐためにも確実な捕球能力も求められます。同時に送球距離も長くなることから強い肩も必要になります。
さらに狙った所へ投げられるコントロールも要求され、この点に関してはレフトやライトより精度が要求されます。
この理由はセンターの本塁送球はレフトやライトとは異なり、マウンドが送球の邪魔になるからです。
送球がマウンドの上り傾斜部でバウンドすると、ボールの勢いが失われたり方向が変わったりすることがあり、必ずマウンドの下り傾斜部にバウンドさせなくてはいけません。
必要以上にマウンドの上り傾斜部を避けようとするとキャッチャーに対してハーフバウンドの送球になってしまいますし、攻めすぎると上り傾斜部に当ててしまいかねず、センターの本塁送球は繊細なコントロールが求められるのです。
このような配慮はレフト・ライトには必要なく、センター独特の難しさと言えます。
最後に、センターには深い野球知識が必要です。
センターはその守備位置から、ピッチャー・キャッチャー・打者が良く見えますので、
どんなコースをどのように打ち返すのか?
を考えながら守ることになります。
打者の特性だけでなく状況に合わせたバッティングやセオリーも考慮する必要もありますし、投手と打者の優劣を見抜くことも求められます。
このような野球知識があればあるほど守りやすくなりますし、野球知識が浅いほど守りにくくなるでしょう。
いずれにしても、考えながら守っているセンターとただボーっと突っ立っているセンターでは、同じ身体能力の場合でも守備力に差が出てしまうのです。
「センターは中心には守れない」って知ってた?
センターを守ったことのある人なら分かると思いますが、
センターは中心(本塁と二塁を結んだ直線上)には守れない
のです!知ってました?
この理由は簡単で、本塁と二塁を結んだ直線上に守ろうとするとピッチャーと投球されたボールが重なってしまい、打者が打つ瞬間を見ることができないためです。
打者が打つ瞬間を見ることができなければ、一歩目が遅れてしまい(一歩どころか二歩・三歩遅れる)、大幅な守備力低下となってしまいますからね。
これを避けるため、必ずセンターは右か左に若干寄って守るのです。
ここからは余談ですが、右か左に寄るといっても適当に決めるわけではなく、自分なりの根拠を持って移動します。
- この打者(右打者)は引っ張りそうだから、右(左中間)に寄ろう
- この打者(右打者)は追っ付けてきそうだから、左(右中間)に寄ろう
- できるだけ中心に守りたいから、最初は左に寄って一歩目は右側を意識しよう
なんて感じで。
もっと細かい話しをすれば、二塁塁審や二塁ランナーが邪魔になって視界をさえぎることもあり、センターはそれられの状況に対応するため、微妙に動きつつ視界を確保します。
遠くからセンターを見ると「ただ立っている」と見えるかもしれませんが、一歩目を最適化するためにセンターは頭を使って微妙に動いているのです。
経験者より一言
私がセンターを守ったことがあるのは高校野球での数試合のみです。
とは言っても、レギュラーだったんですけどね。
高校1年の夏の大会を終えて新チームに移行した際、それまでセンターのレギュラーだった1学年上(高校2年)の先輩がキャッチャーにコンバートされました。
その空いたセンターの枠を私がゲットし、あっさりレギュラーとなったのです。
高校1年の夏休みは練習試合が多く(10日連続、練習試合もありました)、当然私はセンターとしてスタメン出場し続けていました。
しかし、キャッチャーをやっていた先輩が試合中の怪我により試合に出れなくなったのです。
そのような状況で、私は監督から
お前がマスクを被れ!
といきなり言われました(もちろんキャッチャー経験なんてありません!)。
この代役を務めた試合で評価されたのか、それ以後、私と先輩が入れ替わるように私がキャッチャー、先輩がセンターを守るようになったのです。
実際、私がセンターとして試合に出たり練習していた期間はキャリア全体から見れば僅かな時間だと言えますが、高校野球というコアな時期、そして高校野球で初めてレギュラーとなったポジションですので思い入れがあります。
今でも外野の中ではセンターが一番好きですし、打者やバッテリーが良く見えることから色々考えたりする機会が多いので、守備機会が少なくても充実感があるので気に入っています。
センターから相手打者を見て勉強になることもありますし、ただ守っているだけではありませんからね。
私がセンターを守っていて一番好きだったプレーは、ランナー一塁で左中間寄りのヒットを処理し三塁へ送球するプレーです。
ランナー二塁でバックホームするプレーじゃないの?
と思われるかもしれませんが、先程説明した通りセンターのバックホームはマウンドに注意しなくてはいけませんので、熱い気持ちを抑えつつ冷静で確実な送球をしなくてはいけないんですよ。
それに対し、左中間寄りのヒットを処理して三塁へ送球する場合は『ノーカット、ノーバウンド』で投げると丁度いいんですよね(肩の強さにより人それぞれだと思いますが)。
そうすると、熱さ全開でチャージ&スローできますので、滅茶苦茶気持ちいいんですよ♪
もちろんサードの頭を越えるような送球はご法度ですし、打者走者の二塁進塁を防ぐためにも注意+低い送球は欠かせません。
だからこそ上からボールを押さえつけるように投げますし、それに加えて体重がしっかり乗るとスピンの効いた伸びのある送球が出来るんですよ。
今でも、「外野の中で好きなポジションについていいよ」と言われたら、私は迷わずセンターに向かいます♪