野球におけるライト(右翼手)は三塁への送球をはじめ長い距離を投げる機会が多く、強い肩が要求されるポジションです。
また、他の外野手に比べてバックアップの頻度が多く(例えば一塁送球のバックアップなど)、地味にタフさも必要になります。
この記事では、そんなライト(右翼手)の役割と必要な能力について解説しつつ、経験者の立場から体験談も書きたいと思います。
ライトの役割
ライトの役割を説明する前に、ライトを守る選手とチーム事情の関係について説明します。
ライトを守る選手には以下のような傾向があります。
- 野球レベルが低い環境(少年野球や草野球)では守備が上手くない人が守ることが多くなる
- 野球レベルが高い環境(高校野球以上)だと守備の上手い人が守ることが多くなる
これには理由があります。
野球レベルが低いチーム(少年野球や草野球)は右打者の割合が多く、逆方向(センターからライト方向)へ打ち返す技術も未熟なため、結果的に引っ張る打球が多くなりレフトへの打球が増えます。
野球レベルが低いチームでは数少ない ”守れる人” を効率的に配置したいため、打球がよく飛んできて守備機会の多いレフトに守備が上手い選手を、反対に打球があまり飛んでこないライトに守備が上手くない選手を起用するのです。
それに対し野球レベルが高いチーム(高校野球以上)は左打者の割合も増えますし、右打者も状況に応じて逆方向に狙うようになり、レフトへの打球が減ることになります。
そうなると、ライトの守備機会(三塁送球やバックアップも含む)が増えることから、レフトよりライトに守備が上手く肩が強い選手を起用するのです。
それではライトの役割について説明します。
- 打球の処理
- 打球処理のバックアップ
- 送球のバックアップ
打球の処理
ライトに飛んでくる打球の特徴としては、
- 左打者が引っ張る強い打球
- 右打者がコツンと当てて一塁線に切れていく打球(フライ)
が挙げられます。
いずれにしても、打者がバットのどこで捉えたかを見る ”目” と、打球音を聞く ”耳” を使って、打球の質を見極める必要があります。
一塁線を抜けた打球は三塁打になる可能性が高く、素早く確実に処理することが大切です。
ファーストやセカンド後方へ上がったフライは、ライトが捕る方が楽な場合がほとんどですので積極的に捕りにいきます。
また、ライト前への痛烈な打球であればライトゴロを狙うことも可能であり、1点勝負の試合終盤に前進守備を敷いている時などはチャンスです(勇気がいるプレーではあるが)。
打球処理のバックアップ
ライトはファーストやセカンド、センターに飛んだ打球に対するバックアップを行います。
右中間に飛んだライナー性の打球の場合、センターが捕る打球であればセンターの後ろへ回り込んでバックアップしますが、打球がライト方向へ切れていくこともありますので、しっかり打球の質を見極めることが大切です。
また、長打や塁上にランナーがいる状況でセンターが打球処理する場合、送球塁の指示をセンターに伝える役割も担います。
送球のバックアップ
ライトは一塁送球や二塁送球、または一塁牽制球のバックアップを担当します。いずれの場合もしっかりと送球ラインに入ったうえで、ある程度距離をとって備えます。
ライトはバックアップの頻度が非常に多いため、試合中の運動量もかなり多くタフさも要求されます。
ライトに必要な能力
ライトに必要な能力としては、強い肩とタフさが挙げられます。
ランナーが一塁にいる状況でライト前ヒットを打たれた場合、ライトの肩が弱いと一塁ランナーが容易に三塁へ進塁してしまいますが、ライトの肩が強いとそれを未然に防ぐことができます。
特にランナー1,3塁の状況では、
ランナー1,3塁 ⇒ ライト前ヒット ⇒ 再びランナー1,3塁 ⇒ ライト前ヒット ⇒ 再びランナー1,3塁 ⇒・・・
と守備側の心が折れそうな攻撃を受けてしまいかねませんからね。
またタフさに関しては、体力的な面も当然ながら精神的にタフでなければ務まりません。
どんな状況でも常にバックアップに向かうことは口で言うほど簡単ではありませんし、手を抜けば目立ちやすいですから。
経験上、高校野球では『ガッツマン』と呼ばれるような選手が守ることが多く、真面目でひたむきな姿勢も必要です。
ライトは肩の強さとタフさが要求される縁の下の力持ち
野球レベルが低い環境(少年野球や草野球)だと守備の上手くない人が守ることを説明しましたが、その中でも8番打者を兼ねてしまう選手は『ライパチ(ライトで8番)』と呼ばれてしまいます。
その一方、野球レベルが高くなるにつれてライトの重要性が高まると共に、守備陣を支える縁の下の力持ちになります。
一塁送球のたびにバックアップに向かうのは大変なことですが、これを怠ると容易に目立つのです。仲間にも相手にもね。
ライトの怠慢を目にした相手チームは、
付け入る隙があるぞ・・・
と、きっと感じるでしょう。
勝負事において勝利する確率を飛躍的に高める方法は、一切の隙を見せず、相手チームに『自分達が戦える相手ではない』と戦意を奪うことです。
逆に言えば、隙を見せることにより、相手にやる気を起こしてしまうことはできるだけ避けなくてはいけません。
強いチームと弱いチームを比較するとき、ピッチャーの球速や主力打者の振りの速さばかり注目されがちですが、バックアップのような地味なプレーほど差が出やすいのです。
経験者より一言
私は少年野球、中学野球、高校野球、大学野球、草野球と続けてきましたが、ライトを守ったことがあるのは高校野球での2~3試合です。
それも高校1年の夏の大会前という僅かな期間です。
高校1年の夏の大会はまだ3年生主体のチームだったのですが、私のチームはライトのレギュラーが決まっておらず、サードからセカンド、そしてショートに回されていた私はレギュラーを狙ってライトのポジションを志願しました。
とは言っても、「内野より外野の方が試合に出れそう」と本音を言えるような立場ではありませんので、
あの~ 腰が痛いので外野の練習に加わっていいですか?
と苦しい理由を監督に述べて、ライトの練習に加わりました(汗)
実際、当時のライトは競争ポジション化していましたので、一人二人増えたところで監督にとってはどうでもよいことだったでしょう。
そんなことは私でも十分理解した上での行動であり、
練習に加わればこっちのもの。後は良いプレーを見せて監督を納得させるだけだ
と考えていましたからね。
しかし、私は2~3試合に出場しただけで、最終的には3年生の先輩がレギュラーを掴み夏の大会に出場することになりました。
それどころか監督に、
お前はいつまで外野に行ってるんだ、ゴラァ!!!
と言われる始末。
あぁ、内野に帰れってことね・・・
と嬉しいような悲しいような気分になった記憶があります。
短い期間ですが、本格的に外野の練習をしたのは私のキャリアでこれが初めてでしたので、色々勉強させてもらいました。
例えば、『フライは後ろから入る』など。
これはライトに限らず外野手共通の基本テクニックなので頭では理解していたのですが、硬式球って予想以上に伸びてくるんですよ。
油断していると電車バックになってしまいますし、ランナーがいる状況では後ろから助走をつけて捕球しなくては素早く強い送球が出来ません。
そのためには、目を切って素早く落下地点の後ろ側に回りこむことが大切なんですよね。
また、ライトはレフトに比べて打球が素直だと感じました。
高校野球と言っても、何だかんだいって右打者の割合の方が高く、左打者が引っ張った打球より右打者が追っ付けた打球の方が多くなります。
右打者が追っ付けた打球はあまり癖がなく、ほとんどが切れながら沈む打球なんですよね。
芯で捉えて引っ張った打球は癖が強く、ドライブしたり変な方向へ急に曲がったりと非常に厄介ですから、右打者の割合が多いレフトの方が守り辛いと感じました。
まぁ、右打者・左打者関係なく引っ張った打球は癖が強いので、レフトだろうがライトだろうが
汚い打球だなぁ・・・
と思っていましたが(笑)
内野やキャッチャーから見ると、どんな打球も素直に見えるんですけどねぇ。