【野球のルール】両投げピッチャーVSスイッチヒッター【パット・ベンディッド・ルール】

【野球のルール】両投げピッチャーVSスイッチヒッター【パット・ベンディッド・ルール】

スイッチヒッターはピッチャーが右投げなら左打席に入り、ピッチャーが左投げなら右打席に入ります。

では、もし両投げのピッチャーが相手だとしたら、どうするのでしょうか?

ピッチャーから見れば、打者が右打席に入っていれば右投げで投球したいでしょうし、左打席に入っていれば左投げで投球したいはずですからね。

自由に投げて・打ってとなると、永遠に投げる腕と打つ打席が決まりません。

実を言うと、このようなケースでも公認野球規則ではしっかりとルールを規定しており、そのルールは「パット・ベンディッド・ルール」と呼ばれています。

この記事では、両投げピッチャーVSスイッチヒッターの場合、どちらがどのように投げて打つのか、またこのルールが作られるきっかけとなった事件や成り立ち等を解説します。

Advertisement

現在のルールは「打者が後から決めてよい」

公認野球規則には「両投げ投手」の規定があります。

公認野球規則 5.07 投手

(f)両投げ投手

投手は、球審、打者および走者に、投手板に触れる際、どちらかの手にグラブをはめることで、投球する手を明らかにしなければならない。

投手は、打者がアウトになるか走者になるか、攻守交代になるか、打者に代打者が出るか、あるいは投手が負傷するまでは、投球する手を変えることはできない。投手が負傷したために、同一打者の打撃中に投球する手を変えるときには、準備投球は認められない。

投球する手の変更は、球審にはっきりと示さなければならない。

<引用> 2019 Official Baseball Rules 公認野球規則(日本プロフェッショナル野球組織・全日本野球協会) 

このことから、

  • まずはピッチャーがどちらの手で投げるか明らかにする
  • 打者はそれに合わせて任意の打席に入る
  • 原則、同一打者の打撃中にピッチャーは投げ手を変えることはできない

となります。

つまり打者が後から決めてよいということですね。

 

このルールが作られるきっかけとなった「パット・ベンディッド投手」

先程紹介した「公認野球規則5.07(f)両投げ投手」ですが、このルールが規定されたのは2010年(日本)。野球の歴史から見れば、比較的最近作られたルールですね。

実はこのルール、2008年にアメリカのマイナーリーグで起こった出来事がきっかけで作られたのです。

その出来事とは、両投げだったパット・ベンディッド投手がデビュー戦(マイナー)でスイッチヒッターと対戦した時に起こりました。

そのスイッチヒッターは最初に左打席に入ったのですが、それを見たベンディット投手が特注グラブ(指が6本、網が2つあるグラブ)を右手にはめ、左手で投げる準備をしました。

それを見た打者は、右打席に移動。するとベンディッド投手がグラブを左手にはめる(=右投げ)。さらに打者が左打席に・・・と、こんなコントみたいなことを延々5分間も繰り返したのです。

最後は見かねた球審が両チームの監督と協議し、「打者が最初に左右を決める」と裁定しました(ちなみに結果は右対右で三振)。

この出来事が引き金となって、「両投げ投手」の規定が作られました。別名「パット・ベンディッド・ルール」と呼ばれていますが、その理由はお察しの通りです。

 

かなり珍しい「両投げピッチャー」

通称「パット・ベンディッド・ルール」が正式にルール化されるより前に、NPBに両投げピッチャーとして近田豊年投手が南海ホークスにドラフト外で入団しました。

このときパ・リーグは、「投手板につく前にどちらで投げるかを打者に知らせる」と取り決めていましたが、近田投手が公式戦で両投げを披露する機会は全く無く、1988年に1試合登板(そのときは左投げ)しただけで、1991年に任意引退となりました。

近田投手が両投げピッチャーとして活躍していたら、このときにルール化されたかもしれませんね。

 

ちなみに、両投げピッチャーはかなり珍しい存在です。と言うか、野手でも両投げ選手は珍しいです。

有名な選手で言えば、平成唯一の三冠王である松中信彦氏(ダイエー・ソフトバンクで活躍)

厳密に言えば両投げ野手ではありませんが、高校時代に左肩を痛めたことが原因で一時右投げに転向。社会人野球時代に左肩を手術して完治すると、再び左投げに戻りました(プロでも左投げ)。

このような例はあっても、常時投げる手を選んでプレーする選手はほとんどいません。スイッチヒッターの多さと比べるまでもありませんね。

Advertisement

最後に

この記事では、両投げピッチャーとスイッチヒッターが対戦した場合にどちらがどのように投げて打つのか、またこのルールが作られるきっかけとなった事件や成り立ち等を解説しました。

現実的にはほとんど無いシチュエーションなので、覚えていなくても特に困らないルールですけどね(汗)

ただ、現実的ではないと思われていた二刀流を実現した大谷選手が現れたように、いずれ両投げピッチャー、両投げ野手が活躍する時代が来ないとも限りません。

体のバランスを整えるために両方で投げる練習をする選手もいますし、可能性が無いわけじゃないと思うんですけどね。

コラムカテゴリの最新記事