野球においてリリースとは、投球(送球)するときに指からボールを離すことです。
また、リリースの位置のことをリリースポイントと言います。
リリースが悪いと狙った所へ投げられませんし、力強く勢いのある速いボールも投げられません。
それだけにリリースは投球動作において重要なポイントなのですが、投球腕のスイングスピードが速いためにどうしてもメカニズムを理解することを疎かにし、感覚に頼りがちになってしまいます。
この記事では、リリースのメカニズムを明確にし、バックスピンの効いた勢いのあるボールを投げるリリースのやり方を解説します。
野球初心者はもちろんのこと、今まで感覚だけに頼っていた野球経験のある人もリリースのメカニズムを理解すれば、その感覚の精度を高めることができるはずです。
バックスピンが増すとボールが伸びる原理
図1
リリースのやり方を解説する前に、バックスピンが増すとボールが伸びる原理について説明します。
図1はバックスピンがかかったボールと、その周りの気流を示したものです。
ボール上の気流は、ボールの回転によってより速く流れるようになります。それに対し、ボール下の気流はボールの回転に邪魔をされ(抵抗となる)、流れが遅くなってしまいます。
その結果、
- ボール上の気圧が低下
- ボール下の気圧が上昇
することになります。
そして、この気圧差が揚力を生み、ボールを浮かせようとする力になるのです。
すなわち、バックスピン量が増えれば増えるほど強い揚力が発生し、伸びのあるボールになるのです。
フォークボールはなぜ落ちる?
フォークボールは出来るだけボールを回転させずに投げる球種です。
すなわち、ストレートに比べてバックスピン量が少ないボールがフォークボールなのです。
バックスピン量が少なければ、発生する揚力も小さくなりますから、重力による下向きの力に逆らえなくなり、ボールが落ちやすくなるのです。
バックスピンが増すリリースのコツ
バックスピンがかかった、伸びのあるボールを投げるためには、
スナップを効かせて、指先でボールを切ればよい
と言われます。
これは間違っているわけではないのですが、大雑把過ぎる説明のため、これでリリースのメカニズムを理解しろと言うのは無理があります。
ここでは、リリースのメカニズムを理解することを目的に、投球腕の手や指の使い方を説明します。
そして、『バックスピンが増すリリースのコツ』における重要ポイントを解説します。
下の図2は、リリースに至る過程を(a)~(f)に分けたものです。
(a)から順に説明します。
図2 投球腕のスイングとリリース
(a)肘を手より先行させる
図3 (a)
投球腕の肘を手より先行させます。これにより肘を支点に投げることが出来ます。
このとき手首を背屈させますが、2本の指(人差し指と中指)でボールを下から受け、手根部に張りを入れます。
背屈とは?
手の甲の方へ、手を折り曲げる動作のこと。
反対に、手のひらの方へ、手を折り曲げる動作を掌屈と言う。
手根部とは?
手のひらの付け根の部分のことです。
(b)手根部から手を振り下ろす
図4 (b)
手を背屈したまま、手根部でボールを投げるようにして手を振り下ろします。
このとき指に力を入れないように!
(c)リリース開始
図5 (c)
”リリース”と言うと、図2(e)だと思う人が多いのではないでしょうか?
しかし、ボールにより多くのバックスピンをかけるためには、以下のような順番でボールを離すことが重要です。
リリースのコツ!
指の付け根 → 第二関節 → 第一関節 → 指先、の順番でボールを離すこと
(c)では、指の付け根からボールを離していきますので、リリース開始ポイントになります。
まだ指先に力を入れてはいけません。
(d)第二関節、第一関節とボールを離す
図6 (d)
(c)に続き、第二関節、第一関節と順番にボールを離していきます。
まだ指先に力を入れてはいけません。
(e)リリースポイント
図7 (e)
指先に力を入れ、ボールを切り離します。
ここがリリースの最終段階であり、リリースポイントになります。
(f)フィニッシュ
図8 (f)
手を掌屈してフィニッシュになります。
コツは指先の使い方と力の入れ方
バックスピンが増すリリースのコツは、指先の使い方と力の入れ方にあります。
バックスピンが増すリリースのコツ
< 指先の使い方 >
指の付け根 → 第二関節 → 第一関節 → 指先、の順番でボールを離すこと
< 力の入れ方 >
指先に力を入れるタイミングは、リリースポイントの一瞬のみ。
特に、指先に力を入れるタイミングについて注意して下さい。
早い段階から指先に力を入れてしまうと、指の付け根からボールを離すことができませんからね。
指先の力を抜くことで、指の付け根からボールを離せるようになり、バックスピンをかけやすくなるのです。
バックスピンを増やせない間違ったリリース
バックスピンを増やせない間違ったリリースとは、先ほども書いたとおり、早い段階から指先に力を入れて投げることです。
指先に力を入れながらボールを投げようとすると、指の付け根からボールを離すことができません。
その結果、ボールを押し出すように投げるしかなく、バックスピンをかけ辛くなってしまいます。
”力んで投げるとボールが走らない”と言われますが、これが理由です。
柔軟性を失った指先では、手の付け根からリリースを開始できず、
バックスピンがかかっていないボールになる
= 伸びがないボール
= ボールが走らない
となるのです。
まとめ
伸びのあるボールを投げることができると、打者を簡単に打ち取れるようになります。
ストレート自体が勝負球にもなりますし、変化球も効果が倍増するでしょう。
そして伸びのあるボールを投げるためには、いかにバックスピンをかけられるかがポイントになりますし、リリースのやり方が重要な要素になるのです。
- バックスピン量が多いほど、伸びのあるボールとなる
- リリースの際、ボールを離す順番は、指の付け根 → 第二関節 → 第一関節 → 指先
- 指先に力を入れるタイミングは、リリースポイントの一瞬のみ
- 指先に力を入れながら投げると、バックスピンを増やせなくなるので注意!