今回はベースランニングについて解説したいと思います。
野球はひとつでも先の塁を取ることによって、戦局が有利になることが多々あります。野球はいかに相手より点を多く奪うかというゲームですので、少しでも先に塁に進むことは重要です。
そのためにも、単純に足が速くなるだけででなく、ベースランニングの技術も野球選手にとって重要なものとなります。
この記事では以下のポイントに絞って解説します。いずれも走者にとって重要な項目ですが、内容を理解すれば誰でも簡単にマスターできるものです。
- 基本となるベースの踏み方
- スタートのコツは重心を理解すること
- クロスオーバーステップのコツ
基本となるベースの踏み方
正しいベースの踏み方はベースランニングの基本技術となります。
ベースの上を踏みつけるのはダメ!
触塁するときに、ベースの上を踏みつけるケースを目にすることがありますが、これは悪いベースの踏み方です。
固いグラウンドを走りながら、いきなり柔らかいベースの上を勢いよく踏みつけると、体のバランスを崩しやすく足の故障の原因になりかねません。
雨で濡れた日のベース上は特に滑りやすく、非常に危険です。さらにクイックターンが滑らかに出来ませんし、スピードが減速してしまいます。
これらの理由により、ベースの上を踏みつけるようなベースランニングはしてはいけません。
ベースは左足で踏む
図1
図1のように、ベースは必ず左足で踏む習慣をつけましょう。ベースを左足で踏む理由は、急激な左回りに対応するためです。
ベースを右足で踏んでしまうと、それまでの直線的なランニングの勢いで急激な左回りに対応できず、走路が膨らんで遠回りしてしまいます。
駆け抜ける場合も左足で
図2
打者走者が一塁ベースを駆け抜ける場合も、図2のように左足でベースを踏みましょう。一塁ベースを左足で踏む理由は、一塁手との接触を避けるためです。絶対に右足でベースを踏んではいけませんからね。
右足でベースを踏もうとすると、打者走者の体はフェアグラウンド内に入ることになり、一塁手と接触する可能性が高まります。
打者走者自身も危険ですが、相手の一塁手は野手の送球を受けるために無防備であり、さらに危険です。
この状況で一塁手と接触した場合、故意でなくても『わざとやっただろ!』と思われても仕方がありませんからね。
あえてベースを踏まない場合
図3
アマチュア野球では、
どんな状況でも全力疾走しなさい
と言われることが多いものです。たとえピッチャーゴロだろうが、いい当たりのセカンドゴロやファーストゴロでも。
このようなケースで、塁審がアウトを宣告しても一塁ベースに到達しておらず、かつ最後まで全力疾走をやるならば、あえてベースを踏まない選択肢もあります(図3参照)。
ベースを踏むという動作は、多かれ少なかれ怪我のリスクがあり、それを回避するためです。もちろんアウトを宣告された段階で走るのを止めてもいいですが、それを良しとしないチーム方針もありますからね。
注意ポイント
審判がジャッジをしていない場合は必ずベースを踏むようにして下さい。
絶対にセルフジャッジしてはいけません。
スタートのコツは重心を理解すること
塁上走者は打者が打った瞬間の一歩目が重要です。スタートが遅れてしまえば、先に進めたはずの塁に進めないことになりますからね。
『スタートを早める=一歩目を早くする』ためには、重心について理解する必要があります。
以下の記事でも書いたのですが、重要なことなので改めて説明しますね。
重心の定義と性質
重心の定義は以下の通りです。
重心とは・・・
質量の中心点。物体の重さ(重力)を考慮し、その点を支えると全体を支えることができる点のこと。
人体の重心はへそ付近にあり、重心移動とは人体の重心を移動させることです。
重心の性質は以下の通りです。
重心の性質とは・・・
・重心が高いほど不安定になる
・重心が低いほど安定する
重心が高いと不安定になるということは、すなわち動きやすくなることと同じです。
逆に、重心が低くなると安定してしまい、動き辛くなることと同じ。
この重心の性質は、スポーツ選手にとっては非常に重要なことですので、ぜひ覚えて頂きたいと思います。
走者は重心を高く保つこと!
塁上走者がスタートを早めるコツは、重心を高く保つことです。物理法則により、重心の位置が高いほど物体は移動させやすからです。
では、走者が重心を高く保つためにはどうしたらよいのでしょうか?
それは、腰を落とさないことです。腰を落とせば重心が下がってしまいますからね。
ポイントしては両脚の間隔を肩幅程度に留めることです。両脚を広げてしまうと、腰が落ちてしまい重心が下がってしまいますからね。
ワンポイント
この重心の性質は守備にも応用できます。打者が打つ前、野手は腰を落として構えてはいけません。
理由は腰を落とすことによって、重心が下がり、物理的に動きにくくなってしまうからです。すなわち一歩目が遅くなってしまう。
守備が上手な人は、打者が打球を放つタイミングに合わせて軽くステップしたり、小さくジャンプしたりします。
これは重心を高く保ち、打球に対して反応を早めているからなんですよ。
クロスオーバーステップのコツ
塁上走者は一歩目を早めるために、クロスオーバーステップでスタートをきりましょう。
クロスオーバーステップとは図4のように、左足をクロスして踏み出して走り出すステップ方法です。
図4
コツは右足のつま先を意識すること
慣れれば特に難しいステップではないのですが、苦手な人もいると思います。
コツはクロスしない方の足の使い方。図4で言えば右足です。
ステップするときに右足のつま先を閉じたままでは、左足をクロスできません。ですので右足のつま先が開くようにかかとを移動させるのです。
この動作が出来ないと左足をクロスさせようとしても、右腰が開いていませんので、非常に窮屈な動作になってしまいます。
その結果、クロスオーバーステップが苦手だと感じてしまうんです。
右足の動作を理解してもらえれば、簡単に克服できますからね。
なぜ右足を先に踏み出してはダメなのか?
実際のところ右に移動するとき、右足を先に踏み出すことは不自然ではありません。
では、なぜクロスオーバーステップが推奨されるのか?
これは重心の性質が関係しているからです。
スタートの際、右足を先に踏み出してしまうと、その瞬間両脚の間隔が広がります。そうすると腰が落ちることになり、重心が下がります。
先ほど説明した通り、重心は下がると安定して動き辛くなる性質を持っています。
その結果、一歩目が遅れてしまうのです。
別な見方をしてみます。
右足を先に踏み出すと、当然左足は残ったままですよね。左足が残っているということは、腰も残っています。
次に左足のステップに移るわけですが、当然左足のスライドは広くなってしまいます。それも思い腰を引きずりながら。
負荷が重い状態のスタートですから、一歩目が遅くなって当然なんです。
まとめ
この記事で書いたポイントは、どれも基本的なことであり、特に目新しいものではありません。
しかし基本的なことであればあるほど、その理由を理解する必要があります。
基本的な動作を知っているのに、試合になると非合理的な動作をする選手は意外に多いんですよね。
『ベースを左足で踏む』と言うことを知っておきながら、大きく膨らみながらベースランニングをする選手。
目的が『ベースを左足で踏む』ことになっている。
でも目的はそこじゃない。速い速度でベースランニングすることが目的でしょ?
左足でベースを踏むからこそ、急激な左回りに対応出来るんですよ。せっかく左足でベースを踏んでも、膨らんだ走路を走っていては意味がありませんから。
こうならないためにも、基本的なことであればあるほど、その本質を理解する必要があるのです。