バッティングでバットがボールに当たる瞬間をインパクトと言います。
インパクトをそのまま訳すと『衝撃』という意味ですが、バッティングのインパクトも同じような使い方ですね。
この記事では、
- インパクトの瞬間にどんなことが起こっているのか?
- インパクトで押し込むことは可能か?
- インパクトで押し込むと感じる理由
について解説します。
インパクトの瞬間に「押し込む」ことは不可能!
打球を遠くに飛ばすために、右打者の場合『右手の押し込むが大事だ!』と言われます。左打者なら左手、すなわち捕手側の腕で押し込むことが打球を遠くに飛ばす『秘訣』という意味ですね。
結論を先に書きますが、インパクトの瞬間に押し込むことは不可能です!
打者がボールをバットで捉えたことを認識し、その状態からさらに力を加えようとすることは物理的に無理なんです。
その理由を物理的に解説します。
インパクト時間と人間の反応時間の関係
硬式ボールとバットの接触時間(=インパクト時間)は以下のようになります。
インパクト時間(ボールとバットが接触している時間)
約1m [sec] = 0.001 [秒]
それに対し、視覚刺激や皮膚刺激に対する人間の反応時間は以下になると言われています。
視覚刺激や皮膚刺激に対する人間の反応時間
約100m [sec] = 0.1 [秒]
図1
この関係をグラフで表したものが図1です。
これを見て分かるとおり、打者がバットにボールが当たったと感じるときには、既にボールはバットから離れてしまっています。
よく野球漫画であるような、打者がインパクトの瞬間に渾身の力を込めて打球を力強く弾き返すことなど不可能なんです。
これがインパクトの瞬間に打者が押し込むことが不可能な物理的な理由です。
「押し込む」感覚の正体は?
打者がインパクトの瞬間に、意図して押し込むことは物理的に不可能だということはご理解頂けたと思います。
その一方で、
押し込まないと打球は飛ばないぞ!
と体験的に、あるいは感覚的に思われる方もいるんじゃないかと思います。
ボールを芯で捉えた心地よい感覚とはまた違った、明らかにボールに力を加えたような感覚を。
ひとこと
投手が投げるボールは運動エネルギーを持っています。この運動エネルギーは、ボールの球速が速くなればなるほど大きくなります。
当然、バットにボールが当たった衝撃(インパクトの衝撃)は非常に大きなものになります。バットをただ差し出した状態で、投手の投げるボールに当たった場合、簡単にバットは弾き飛ばされるでしょう。
ポイントになるのは、このインパクトの衝撃をどのように受けるべきか?です。
打球を遠くに飛ばすには、スイングスピードを速める必要がありますが、それと同時にインパクトの衝撃に負けない動作も必要になります。
そして、このインパクトに負けない動作が出来たときに、打者は捉えたボールを押し込めたと感じるのです。
これが、打者が感じる『インパクトの瞬間に押し込む』の正体です。
・打者がインパクトの瞬間に、意図して押し込むことは物理的に不可能。
・それとは別に、打者が『押し込む』と感じることは確かにある!
・その『インパクトの瞬間に押し込む』正体は、インパクトの衝撃に負けない動作ができたときである。
インパクトの衝撃に負けないための動作とは
インパクトの衝撃に打ち勝つためには、どのような動作が必要なのでしょうか?
それは捕手側の手(右打者なら右手、左打者なら左手)が、インパクトの瞬間に裏突きの状態になっていることです。
裏突きとは?
正拳突きとは逆に、拳の手甲部が下向きになる突き技のこと。正拳突きは手の甲が天を向くが、裏突きは反対に、手の甲が地面に向く。
これは正拳突きです。
裏突きなら何でも良いわけではない!
ここで『インパクトの瞬間は誰でも裏突きになるんじゃない?』と思いませんでしたか?
インパクトの瞬間、捕手側の手が正拳突きになるような打者はそうそういません。重要なのは、この『裏突き』には条件があることです。
単に、捕手側の手が裏突きの形になっていれば良いわけではありません。
以下の写真は捕手側の手(=右手)が、インパクトの瞬間裏突きになっているものです。どれも右手の甲が地面を向いていることが分かると思います。
写真①
写真②
写真③
上に挙げた写真①~③は、いずれも右手が裏突きになっています。しかし、どれも良い形という訳ではありません。良い形もあれば悪い形もあります。
答えは、以下のようになります。
・写真1 → 良い形
・写真2 → 悪い形
・写真3 → 悪い形
・どんな形が良くて、どんな形が悪いのか?
・捕手側の手は、具体的にどんな裏突きになる必要があるのか?
これらを説明しないと上に挙げた回答の理由が分からないと思いますが、記事が長くなってしまいますので、以下の記事で詳細に解説します。ぜひご覧ください!