【野球のルール】ピッチャーはランナーなしでもセットポジションを完全に静止すべきか?

【野球のルール】ピッチャーはランナーなしでもセットポジションを完全に静止すべきか?

塁上にランナーがいるとき、セットポジションをとったピッチャーは完全な静止が求められます。

これは野球をやっている人なら誰でも知っていることです。

では、塁上にランナーがいない場合にセットポジションで投げるピッチャーは、同じく完全な静止が求められるのでしょうか?

ランナーがいるときと同じで静止すべきでしょ!

ランナーがいないから静止する必要ないんじゃない?

答えはどちらか一方ですが、答えのみならずその理由まで知っている人は少ないと思います。

この記事では、「ピッチャーはランナーなしでもセットポジションを完全に静止すべきか?」の答えとその理由について説明します。

ピッチャーをやっている人なら「知っておいた方がよいルール」ではなく、「絶対に知っておかなくてはならないルール」ですから覚えておきましょうね。

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公認野球規則の答え

「ピッチャーはランナーなしでもセットポジションを完全に静止すべきか?」この答えは以下の通りです。

完全静止する必要はない。ただし、アマチュア野球はそれを適用しない。

公認野球規則 5.07 投手

(2)セットポジション

【原注】走者が塁にいない場合、セットポジションをとった投手は、必ずしも完全静止をする必要はない。しかしながら、投手が打者のすきをついて意図的に投球したと審判員が判断すれば、クイックピッチとみなされ、ボールが宣告さる。6.02(a)(5)[原注]参照。~略~

【注1】アマチュア野球では、本項[原注]の前段は適用しない。

<引用> 2019 Official Baseball Rules 公認野球規則(日本プロフェッショナル野球組織・全日本野球協会) 

 

少し回りくどい言い回しですが、簡単に書けばこうなります。

アマチュア野球

ピッチャーはランナーなしでもセットポジションを完全に静止する

アマチュア野球を除く(主にプロ野球)

ピッチャーはランナーなしでもセットポジションを完全に静止しなくてもよい。

でも、なぜプロとアマで異なるルールを規定しているのでしょうか?

ピッチャーのセットポジションなどプロ・アマ区別するようなものではないと思いませんか?

これにはちゃんと理由があり、次項でそれを説明します。

 

異なるルールを規定している理由

「ランナーなしの場面でセットポジションを完全に静止する・しない」に関し、プロとアマで異なるルールを規定している理由は、そのルールが作られた過程にあります。

塁上にランナーがいてセットポジションから投球する場合、ボールを両手で身体の前方に保持し完全に静止しなくてはいけません。

そもそも、セットポジションは塁上のランナーの盗塁を防ぐ目的で用いる投球姿勢です。もし投手が「完全静止」せず投球するとランナーは盗塁できませんからね。

すなわち「セットポジションの完全静止」はフェアプレイの精神から規制しているルールなのです。

ここで、塁上にランナーがいないときに「完全静止」せずセットポジションで投球した場合、同じ動作で投球していれば打者がタイミングを狂わされることはなく、アンフェアではありません。

これらのことから『規制の必要はない』というのが当時のMLBの考え方でした。

 

プロ側(NPB)は外国人投手が多く在籍していますので、できるだけルールをMLBに合わせる方が賢明です。

しかし2007年のプロ・アマ合同委員会において、

止まっても止まらなくてもいいとなると、投手が作為的に動作を変えて投球することが想定され、そうなると打者も幻惑されるので認めるべきではない

という結論になり、以下の【注1】を追加し、「日本では走者が塁にいない場合でもセットポジションの完全静止を求める」というルールになりました。

【注1】我が国では、本項【原注】の前段は適用しない

※1 【原注】=走者が塁にいない場合、セットポジションをとった投手は、必ずしも完全静止をする必要はない。

 

2017年のプロ・アマ合同委員会において、プロ側から『【注1】の削除』または『所属する団体の規定に従う』と改正することが提案されました。

アマ側はプロ側の事情(外国人投手が多く在籍している)に理解を示す一方、

塁上にランナーがいるときのセットポジションからの投球が乱れるのではないかとの懸念があるため、今しばらくはランナーの有無にかかわらず、完全静止を義務付ける必要がある

との判断から、現在のルールのようにアマチュア野球限定の規則として残すこととしたのです。

【注1】アマチュア野球では、本項[原注]の前段は適用しない。

「ランナーなしの場面でセットポジションを完全に静止する・しない」に関し、プロとアマで異なるルールを規定しているのは、このような過程を経て作られたルールだったことが理由です。

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最後に

経緯を理解していただければ分かると思いますが、細かいルールが違えどルールの設計思想は同じなんですよね。

当時のMLBの考え方は、塁上にランナーがいないときに「完全静止」せずセットポジションで投球しても

  • ピッチャーは作為的に動作を変えて投球なんてしないよね、アンフェアだもんね~

という性善説に立っているだけで、ピッチャーの作為的な変則投球を認めているわけではありません。

対する日本球界は、

  • 投手が作為的に動作を変えて投球することが想定されるぞ!

という性悪説に立っており、これもピッチャーの作為的な変則投球を防ぐことが目的です。

つまり、両者とも『ピッチャーの作為的な変則投球を認めていない』ことは共通しており、それを防ぐ手段に違いがあるだけなのです。

ですので、ピッチャーをやっている人はこの記事で説明したことを覚えておき、間違っても作為的な変則投球をしないように注意しましょうね。

ピッチャーはランナーなしでもセットポジションを完全に静止すること

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