好打者の条件として、投手が投げるボールに上手くタイミングを合わせられること挙げられます。
上手くタイミングを合わせるために、具体的にどのような能力が要求されるのでしょう?
また、上手くタイミングを取るためにどんな練習が効果的でしょうか?
この記事ではタイミングを取るために必要な動作を解説し、そのために効果的な練習方法を説明します。
理想的な「ボールの待ち方」とは?
よく、狙い球を絞らない打ち方のことを『反応で打つ』と表現されます。
『反応で打つ』なんて表現すると
そんなことが出来るのは天才だけでしょ?
と思われる人も多いのではないでしょうか。
では、少し表現を変えてみます。
< 狙い球を絞らないとは >
ある球種があるコースへ投げ込まれた時に、『どのようにバットを出せば打ち返せるか』体が理解している打ち方
やっぱり難しそうな感じですかね。
しかし、このボールの待ち方が『理想的なボールの待ち方』なのです。決して天才だから出来るわけではなく、練習を積めば誰でも出来るようになります。
狙い球を絞るデメリット
狙い球を絞るメリットは、球種やコースを絞ることによりタイミングを合わせやすくするためです。
一方、デメリットもあります。
『狙い球を絞る』場合、投手の投げるボールを打者が取捨選択しなくてはいけません。すなわち、必ず捨てなくはいけないボールがあるわけです。
その分、打者は受身になり、攻め込まれますので不利になります。
そんなことは分かってる!
それが出来ないから狙い球を絞るんだろ!
それが出来れば、最初から苦労しない!
このように思われる方もいると思いますが、練習次第で出来るようになりますから。
反対に、普段の練習からただ漫然とボールを打っているだけでは出来るようになりません。
ひとこと
能力の高いプロ野球選手の場合、速いストレートと鋭く多彩な変化球を投げる投手ばかりですから、プロの打者でも狙い球を絞る必要があるでしょう。
でもアマチュア野球において、対戦する全ての投手が、自分の打撃能力では太刀打ちできない能力を持ち合わせているわけじゃありませんよね。
アマチュア野球の場合、レベルに差がつきやすいですから、当然、能力の低い投手と対戦する機会も多く巡ってきます。相手投手の能力が低ければ低いほど、ボールを絞らず打てることが容易になります。
でも、普段からボールを絞らず打つ意識を持って練習していなければ、本番でもボールを絞らず打つことは出来ません。
タイミングが取れる=緩急に強くなること!
タイミングが取れるようになるには『緩急に強くなること』が必要です。速いストレートに差し込まれず、遅いカーブでも体勢を崩されない、みたいに。
高校野球の一般的な打撃練習を例に挙げて、『緩急に強くなる練習法』について説明したいと思います。
高校野球の打撃練習は次のようなスタイルが多いですね。
ゲージが2箇所
片側のゲージは打撃投手が投げる球を打つ(投げる球種はストレート)
もう片方のゲージはピッチングマシンを使ってカーブ打ちを練習する
当然ですが、練習する選手は各々のゲージで投げこまれる球種をあらかじめ知っています。
球種を知ったうえで、その球種を打ち返せるようになることが目的ですので、別に悪くありませんが。
ある程度打ち返せるようになった選手は、以下のように工夫してみましょう。
工夫すること
・ストレートのタイミングでカーブを打つ
・カーブのタイミングでストレートを打つ
このとき、体がどのような反応しているのか認識することが大切です。
ストレートのタイミングでカーブを打つ
例えば右打者が、右投手が投げるカーブに設定したピッチングマシンで、打撃練習をする場合を例に挙げて説明します。
具体的な練習方法
マシンから投げ出されるボールはカーブですが、あえてストレートが来るイメージを持って打ってみて下さい。
そうすると大体は以下のような傾向に分類されるはずです。
① 振り出しが早く空振りしてしまう。
② バットには当たるが、ボテボテのサードゴロばかりになる。
③ ある程度、バットの芯に当たるが、打球が狙った所へ飛ばない。
④ 違和感なくイメージ通りの打球が飛ぶ。
④は全く問題なくタイミングが取れています。①~③はタイミングがずれています。違いは、ずれたタイミングの大きさだけです。
では、なぜタイミングを合わせることが出来ないのでしょうか?
それは『バッティングの間』が取れていないからです。
バッティングの間とは
ここで『バッティングの間』について説明します。
打者はバックスイング→フォワードスイングの流れでスイングしますが、一連の動作を大きく分けて考えてみます。
大まかなスイングの流れ
< 順序1 >
捕手側の足(右打者の右足、左打者の左足)を軸にしてバックスイングを行いトップを作る。このとき投手側の足(右打者の左足、左打者の右足)はステップさせる。
< 順序2 >
トップの状態を維持しながら、ステップした投手側の足を地面に着地させる。
< 順序3 >
バックスイングで作った体の捻りを解いた後に、トップを崩しフォワードスイングを開始する。
この< 順序2 >と< 順序3 >の間に『バッティングの間』が存在します。
ポイントはステップした前足が地面に着いたとき、作ったトップを維持することです。そうすることでタイミングを微調整しながらフォワードスイングに移ることが可能になります。
このトップを維持できる時間が長いほど、投手が投げるボールに対しタイミングを合わせやすくなります。
タイミングを調節できる時間が長いほど有利ですからね。バッティングの間を取れる選手ほど、緩急に崩されにくいのはこのためなのです。
バッティングの間がとれないと・・・
ステップした前足が地面に着く前に、トップを崩しフォワードスイングに移るスイングは一番悪いパターンであり『バッティングの間』が取れていない状態です。
ステップにより踏み出した投手側の足は『壁』になり、言わばバッティングの土台になります。
この『壁』が出来上がっていない状態でバットを振り出すことは、基礎工事が済んでいないのに建物を建てるようなものです。
カーブのタイミングでストレートを打つ
次にバッティング投手が投げるゲージで、打撃練習をする場合を例に挙げて説明します。
具体的な練習方法
バッティング投手がカーブを投げてくるイメージを持ってストレートを打ってみましょう。この場合も先程同様、色々な結果になると思います。
① バットにボールが当たらないほど振り遅れる。
② バットに当たるが、打球がフェアグランドに飛ばない。
③ バットに当たるが、打球が狙った所へ飛ばない。
④ 違和感なくイメージ通りの打球が飛ぶ。
④は全く問題なくタイミングが取れていますね。①~③はタイミングがずれており、それぞれ程度が違います。
では、なぜタイミングがずれるのか?
理由は『始動が遅い』からです。
『始動が遅い』とは、『バックスイングに入るタイミングが遅い』という意味です。
バックスイングはフォワードスイングの準備段階ですから、これが遅れてしまえば速いストレートに対応できなくなるのは当然です。
バックスイングが遅れると、トップを作り始めるタイミングが遅れてしまいます。そのために遅れた分をどこかで補正しなくてはいけません。
では、どこで遅れたタイミングを補正するかと言うと・・・
・トップを作り終えるまでの時間
・ステップした投手側の足が地面に着地するまでの時間(=バッティングの間を短縮)
となってしまいます。
トップを作り終えるまでの時間を短縮してしまうと、深いトップが作れず『浅いトップ』になってしまい、力強い打球を放つ弊害になってしまいます。
また、ステップした投手側の足が地面に着地するまで我慢できず、フォワードスイングに移ってしまうと体の捻りを戻す力を最大限利用できません。
なぜなら投手側の足が壁になっていないからです。この打ち方では腕の力でスイングするだけになってしまいます。
結果的に、バットにボールを当てたところで強い打球は打てません。
まとめ
タイミングを取ることは打者にとって非常に重要なテーマになります。しかし、バッティングに必要な動作を省いてしまってはいけません。
速いボールを投げる投手を相手にする場合ほど、タイミングを取り取り辛くなりますが、それは単に球速が速いためだけでなく、打者が自らのバッティングを崩してしまうことも多いんです。
速いストレートに負けまいと腕に力が入ってしまうと、バッティングの重要な動作である『深いトップ』『バッティングの間』を作れなくなるからです。
対峙する投手のストレートが速いほど始動を早くする必要がありますし、普段からその意識を持って練習することが大切です。
・普段の打撃練習から緩急を意識すること!
・速いストレートに対応するには『始動を早く』すること!
・始動が遅くなると、バッティングを崩す要因になる!
・遅い変化球は『バッティングの間』を使って対応すること!