イップスを治すために選手や指導者がやるべきこと

イップスを治すために選手や指導者がやるべきこと

イップスとは以下の症状のことで、プロ野球選手でもイップスになる人は多いです。

精神的な原因などにより運動動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害

イップスになった人が全員告白している訳ではありませんし、過去にイップスになったことを伏せている選手や、現在イップスと戦っている選手もいるはずですから、意外と体験した選手も多いと思われます。

投手や捕手の場合、ポジションの特性上ばれ易いですが、内野手は気付かれない場合もあるでしょう。ただ普段のプレーを見続けている人なら、大体分かると思いますが。

 

 

今回の記事は、私自身のイップスの体験を元に以下のことをまとめました。

今イップスに苦しんでいる選手、またはイップスになってしまった選手を預かる指導者の方は、ぜひ参考にして下さい。

 

 

  • イップスに苦しんでいる選手の心境
  • イップスに苦しんでいる選手をさらに苦しめることは何か?
  • イップスを克服するために選手がやるべきこと
  • イップスを改善するために監督・コーチがやるべきこと

 

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イップスに苦しんでいる選手の心境

一般的に以下のような人がイップスになりやすいと言われています。自分で言うのも何ですが、私は大体当てはまっています。

 イップスになりやすい人

 

 真面目な性格

 

 責任感が強い

 

 やさしい性格

 

私がイップスにかかったのは高校2年の夏。捕手としてレギュラーだった私は、雨の日の練習試合で、投手への返球がワンバウンドになったことが発端でした。

それ以降、完璧な返球を目指し、投手へピンポイントで狙った場所に返球しようとしたんですね。ピンポイントで狙っていると、ボール一個分、二個分外れただけで『失敗した』と感じるんですよ。

そうやって、自分の技量に合わない目標を『出来て当然のこと』と錯覚し、本来失敗とは言えないことを気にするようになりました。

徐々に自信がなくなり、自分でも信じられない暴投を投げるようになった・・・ これが私のイップスのはじまりです。

 

このとき、私とチームの状況以下のような感じでした。

< 私 >

捕手、打順は4番、副キャプテン。

< チーム >

夏の大会ベスト8。我々の成長によっては甲子園も夢ではない。

同時期に、それまで無かった後援会が発足し、選手へのバックアップ体制も整いました。選手も手応えを感じていましたし、周囲の期待も日に日に高くなっていきました。

私の責任も重くなっているのは感じていましたし、結果を残して当然である立場であると同時に、チームを引っ張る存在でなくてはいけません。

そのような立場なのに、投手への返球が暴投になったり、ボール回しのスローイングがそれたりしてはチームが締まりません。

 

そういった隙を見せるようなプレーは、三振するより辛かったですし、惨めな気持ちになりましたね。

しかし、結果的にそういった『責任感』や、『強いチームの選手はこうあるべき』と強く思ったことが、自分を追い詰めていったと思います。

イップスにかかっているときの心境は今でもよく覚えています。

  • 自分はプレッシャーにものすごく弱い人間なんだろう・・・
  • 何か根本的な技術的な問題を抱えているのだろう・・・
  • 早くレギュラーを剥奪して欲しい=試合に出たくない
  • 『ボールが投げられない』なんて恥ずかしいことを相談できない
  • 練習が嫌い。特にノック
  • 野球が嫌い。高校野球も早く終って欲しい・・・

当時はイップスを知らなかったこともありますが、こんな惨めな状態を相談するのは『恥じ』だと思っていましたし、自分で解決しようともがき苦しみました。

それでもどうにもならないと、次第に野球そのものが嫌いになってくるのです。

 

イップスになった選手をさらに苦しめることは何か

私がイップスに苦しんでいるとき、さらに私を苦しめていたのは試合後のミーティングです。このとき必ずと言っていいほど顧問の先生に以下のことを言われていたんです。

強いチームのキャッチャーはピッチャーへの返球がしっかりしているぞ!

ちなみに、この顧問の先生はあまり野球に詳しくない先生です。

イップスにかかってから、私は投手への返球を山なりで投げるようになっていました。顧問の先生にとっては山なりの返球=怠慢プレーに映っていたようです。

 

きちんとした返球をした方が良いことくらい、私にも分かっています。

でも、投げられないのです。

正確に言うと、投げるのが怖い。

だから、それをみんなの前で指摘して欲しくない気持ちで一杯でした。

 

イップスになると、スローイングに対し『しっかり投げなくては・・・』という気持ちが強くなりすぎ、ゆったりした送球動作になったりするんですよ。

それでも、すっぽ抜けて暴投になったりするわけです。そういった選手の姿を『怠慢な動き』と捉える人は結構多いんです。

 

出来て当然のプレーをやっていない=怠慢プレー

と思われていることが、選手にとって一番辛いことなんです。

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イップスを克服するために選手がやるべきこと

結論を先に書くと、以下のことがイップスを克服するために必要なことだと考えています。

 

  • 自分の投球(送球)フォームをビデオでチェックする
  • 周囲にイップスを打ち明ける

 

自分の投球・送球フォームをビデオでチェックする

イップスになると、

同じフォームで投げているのに、場面によって投げられたり、投げられなくなったりする・・・

と思いがちです。

でもビデオでよ~く見て下さい。

上手く投げられるときと、投げられないときはフォームが違っているはずです。

 

私もそうでした。

イップスのときは投げるときの指先だけが気になっていたんです。投げる瞬間、指先が硬直してボールにスピンをかけることが出来ない感覚でした。

大学に入って、自分が出た試合のビデオを見たときに、自分の思っていたイメージとは違っていたんです。

腕や指先が硬直している感覚はあったのですが、実際は体全体が硬直している感じだったのです。

 

言い換えると、腕や指先に気が向き過ぎていて、体のしなやかさや捻りなどが全く無いんですよね。当然、腕も振れていませんでした。

私は、指先ばかり気にし、ボールにスピンを与える正しい感覚を掴むことがイップスを治す条件だと思っていました。でも実際は、投げる前の前段階である『体の捻じれを作る』ことから見直す必要に気付きました。

イップスが治ってからも、たまに投手への返球を山なりで投げることもあるのですが、イップスのときと比べると全然違います。

ビデオを見て比較するとよく分かりました。

< イップスのとき >

とにかく腕が振れない早く投げようと、体の捻じれが無い。

 

< イップスでないとき >

腕が振れているしっかりと体の捻じれが作れている。

イップスになってしまっても、その症状が出るときと、出ないときがあります。それぞれをビデオ撮影して比較すれば、目に見える形で違いが出るものです。

そのから、注意すべき点、改善できる点が見つかるかもしれません。

 

周囲にイップスを打ち明けること

イップスにかかった選手は、『投げられないなんて恥だ』と思いがちです。だから、周囲に打ち明けたくないものです。

一方で自分の症状、苦悩を理解してもらえない辛さもあります。その狭間にいる状態がイップスからの改善を蝕んでいるのです。

周囲にイップスを打ち明けることは非常に勇気がいります。

 

なぜなら、周囲はそれを技術不足を棚に上げた甘えと捉える恐れがあるからなんです。

それでも、勇気を出してイップスを打ち明けて下さい。

メリットは沢山あります。

 

例えば、投手への返球がそれるならば、セカンド・ショートに注意深くカバーに入ってもらえるかもしれません。また、他の選手から、先ほどのビデオ同様、フォームの異常を感じて教えてくれるかもしれません。

野球はチームプレーですが、試合でなくても周囲の協力が得られることもあります。

そして、そういったチームメイトの姿に大きな勇気をもらうこともあるんです。

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イップスを改善するために監督・コーチがやるべきこと

チームの選手がイップスになったことを認識したり、選手からイップスを打ち明けられたら、監督やコーチは何をすべきでしょうか?

 

イップスにかかった選手と同等の選手が同じポジションにいる場合

一旦、イップスである選手をレギュラーから外すべきだと思います。

イップスになってしまった選手は自信を失っている状態です。自分を信じられない状態ですから、相手と戦う状態ではないのです。そしてライバルと戦う状態でもありません。

イップスになった選手はミスに対して、非常に強い恐怖を感じていますので、その負担を減らすべきです。チーム編成にもよると思いますが、ポジションを変更(コンバート)も有効です。

練習ではイップスを克服するため、フォームのチェックや修正するための練習をさせ、メンタル的な原因がどこにあるのか考えてあげる必要もあります。

 

イップスにかかった選手が不動のレギュラーであり、スタメンを外せない選手の場合

私のケースはこれにあたりますし、イップスにかかる選手はこの場合の方が多いと思います。

イップスを受け入れた上で、お前がイップスでも、このチームに必要な選手だと、該当選手、およびチームメイトに周知する方が良いと思います。

 

例えば、私のように捕手がイップスにかかり、投手への返球や、ボール回しに難がある場合。

ショート・セカンドは投手への返球がそれるかもしれないから、カバーを徹底するように。

ボール回しは、スローイングの練習だと思って、思いっきり腕を振って投げろ。ランナーがいないんだから、いくら暴投になっても構わないだろ?

こんな感じで、チームとしてイップスにかかった選手をフォローしてあげるのです。

 

重要なのは、『イップスを差し引いてもチームに必要な選手』だと思わせることです。

間違ってもイップスに焦点をあてて罵倒し、這い上がってくることを望まないでください!

そのようなやり方は、選手がやる気に満ちているときは有効かもしれませんが、自信のない状態の選手には効果がないばかりか、ますます症状は酷くなります。

 

イップス克服の鍵は「周囲の理解」

イップスと言っても原因は人それぞれあるでしょうから、これをやれば克服できる!と断定することは出来ません。技術的な要素と、メンタルが絡み合うケースも多いですし。

正直、選手からイップスを告白することは、非常に勇気がいることですし、言い出せる人は少ないと思います。

理由は簡単で、そういったことを監督やコーチに受け入れられるか分からないからです。

単なる『甘え』と捉えられるかもしれない・・・

『じゃあ、明日からレギュラーを外すから』とあしらわれそう・・・

選手は不安なんです。

だからこそ、イップスに対して、選手よりも監督・コーチを含めた周囲が正しい認識を持つべきなんです。

中には、

そんな気持ちで戦えるか!気持ちの問題だ!

と思う指導者もいるかもいませんが、それは認識不足であり、そんな浅い問題ではありません

 

先程も書きましたが、選手はイップスにかかっても認めたくない気持ちが強く、周囲に打ち明けるのも抵抗があるものです。だからこそ、周囲がいち早く察知し、手を打つべきなんです。

技術的な向上を求めるために『何事も100%を目指す姿勢』は大切です。その反面『このくらいのミスはしょうがないな』と妥協することも大切です。

この微妙な落とし所というか、バランスが崩れることがイップスの根幹にあるような気がします。

 

『絶対に失敗できない』と意識した瞬間から、失敗に対し怖さを感じるようになります。

その『絶対に失敗できない』と感じるのは、チームの主力であったり、チームを引っ張る存在であればあるほど大きくなります。

その重荷をとり、諭すことも指導者の役割なんです。

 

最後に

私がイップス経験者ということもありますが、出来るだけイップスに苦しむ選手を助けて欲しいと思うのは、イップスに苦しみ続ける選手は、いずれ野球が嫌いになるからです。

野球に携わった人間として『イップスにより野球が嫌いになる』ことは、悲しいことだと思います。

チームメイトは当然のこと、観客の立場でイップスの人が投げる暴投を見て笑ったりすることは止めて下さい。

ヤジなんてもってのほかです!

 

イップスにかかった選手は、真剣に野球に取り組んでいるが故に陥っているのです。

決して、気が緩んでいるわけでもないし、怠慢プレーをしている訳ではありません。

そして、野球が嫌いになるほど悩んでいるのです

 

それでも、笑えますか?

 

真剣に取り組んでいる選手や、苦しんでいる選手を見て笑う人間など、スポーツをやる資格も見る資格もありません。

 

 

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