2013年夏の甲子園
2013年、夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)で名門高校のある選手が見せた『カット打法』は、当時話題になり、様々な意見が飛び交いました。
この高校が準々決勝に勝利したあと、日本高等学校野球連盟(高野連)が以下のような判断を下し、彼のカット打法を封印させました。
わざとファウルを打っていると審判が認めた時にはバントとみなす!
準決勝を控えたタイミングや、グレーな判断などに対し、高野連に対しても批判・非難がありました。
結局、この名門高校は準決勝で敗退することになります。
カット打法とは?
カット打法とは、意図してファウルを打つこと。目的は相手投手を疲弊させつつ、自身もフォアボールで出塁すること。
批判的な意見としては、以下のようなものがありました。
- 正々堂々ではない!
- バントに近いフォームだからダメ!
反対に、賛成意見は以下のようなものが多かったです。
- ルール上問題ない!
- 相手の困ることをやるのは当然のこと!
カット打法はアンフェアではない!
彼のプレーはルール上問題ありませんし、アンフェアなプレーではありません。野球に限らず、相手と勝負するスポーツは『自分のやりたいこと』『相手のやりたいこと』のぶつかりあいです。
『相手のやりたいこと』を防ぎつつ、『自分のやりたいこと』を進めることが、勝利への近道ですからね。
真夏の炎天下の中、投手をはじめとする守備陣は早く守りを終らせて攻撃に移りたい。これを邪魔しようとするのは当然のことです。
私がカット打法を反対する理由
カット打法がアンフェアではないと考える私が、なぜ反対なのか?
その理由は、彼の能力を向上させるプレーではないからです。
野球をやっていた方ならご存知だと思うのですが、ファウルを意図して打つことは結構難しいんですよね。彼は簡単にこなしていましたが、誰でも簡単にマネできるプレーではありません。
彼が『カット打法』を習得するまで、相当な努力を積んだことは想像に難くありません。
しかしながら、
”あれだけのバットコントロールを持ちながら、なぜ、もっと打者としての能力を向上させようとしないのか?”
私はそう感じていました。
最高の打者を目指すべき
最高の打者とは全打席ホームランを打てる打者です。野球選手なら誰しもがそういう打者を目指すべきです。
そのためには確実にボールを捉えるミート力と、強い打球で遠くにボールを飛ばす技術が必要です。彼は確実にボールを捉えるミート力が備わっていた反面、ボールを遠くに飛ばす技術はありませんでした。
彼は小柄であり、長距離打者の資質がないと思う方も多いでしょう。彼自身や指導者も、そういった認識があったかもしれません。
しかし、フィジカル面で有利不利があったとしても、ボールを遠くに飛ばす合理的な打撃技術があれば、最高の打者に近づくはずなんです。
彼の持ち味である『巧みなバットコントール』に加え、ボールを遠くに飛ばす合理的な打撃を習得すれば、数段上の選手になったんじゃないかと思うと、非常に残念な気持ちになってしまいます。
指導者は大きな選手に育つ指導を!
この件に関しては指導者の問題も大きいと思っています。
指導者が主導して、こういうプレースタイルを進めたのか、お互い納得の上で出来上がったプレースタイルかは分かりませんが、前者なら論外ですし、後者なら現状に満足せず、本来目指すべき『数段高いレベルの打者』への道を模索してあげるべきです。
彼が甲子園で見せたプレーは、チームの勝利の為に大きな貢献をしたことに異論はありません。しかし、それと同時に『最高のバッターへの挑戦を放棄している姿』でもあったのです。
ここでは、詳細な打撃理論は避けますが、彼がファールを打つ動作は、合理的な打撃動作からかけ離れたものです。それは彼が最高の打者に遠のくことを意味しています。
私も元高校球児でしたので、チームの勝利の大切さは痛いほど分かっていますが、指導者は選手の未来もケアしてもらいたいものです。
それが指導者の役割なのですから。