見逃し三振を叱っても選手は成長しない!

見逃し三振を叱っても選手は成長しない!

野球の指導者は昔から、過剰に叱ったり、怒鳴ったりする人が多いです。

特に見逃し三振を叱る指導者は本当に多い

しかし、見逃し三振を叱れば叱るほど、選手の打撃能力は下がってしまいます。その理由をこの記事で説明します。

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見逃し三振を叱ることより大事なこと

野球では見逃し三振を『してはいけないこと』『絶対ダメなこと』だと言われます。学生野球では見逃し三振をすると、怒られることも珍しくありません。

私もよく怒られました。

しかし、見逃し三振をした選手を怒っても(体罰は論外です)、選手は成長しません。それどころか、打撃技術向上の妨げになることもあります。

指導者は見逃し三振を叱ることより大事なことがあります。それは、選手がなぜ見逃し三振をしたのか原因を把握することです。

 

見逃し三振した原因は何か?

見逃し三振をしてしまうには原因があります。


前提として、ケースバッティングが求められる場面が除外します。ケースバッティングとは試合展開や得点差、ランナーの存在を考慮したバッティングです。

バースバッティングを考慮するとややこしくなりますので、ランナーがおらずフリーで打てる場面での見逃し三振を想定して下さい。

見逃し三振のパターンを以下の3つに分類します。

・ボールカウントを間違えて、三振になるとは思わなかった

・タイミングが全く合わず、バットを振れなかった。

・ボールだと判断し見送ったがストライクだった。

 

ボールカウントを間違えて、三振になると思わなかった

いわゆるボーンヘッドですが、頻繁にこんなミスがあるようでは困ります。普段の練習からボールカウント、アウトカウントを確認する習慣をつけましましょう。

それでも、試合になると周りが見えなく選手もいますから、そのような選手はベンチから声をかけて確認させることが効果的です。

 

タイミングが全く合わず、バットを振れなかった

よくあるケースですね。しかし問題はバットを振らなかったことではありません。

本当の問題は、バットを振れないくらいタイミングを外されたことです。

投手はタイミングを合わせやすく投げてはくれません。球速の速いストレートも投げれば、遅い変化球も投げてきます。

指導者は、選手がそのようなことを理解して打席に入っているかチェックしなくてはいけません。

試合中、自分の打順が来る前から(ベンチにいるときから)、投手のタイミングを合わせる訓練をしていたか?

試合だけでなく、普段の練習からタイミングを合わせるように工夫しているか?

叱責すべきは、そのような意識が薄いこと、練習を怠ったとでしょ?

それを結果論で叱りつけても選手が萎縮するだけです!

もちろん練習しても、なかなか身につかない選手はいます。その場合でも決して叱責せず、考え方やコツを教え、練習や努力を継続するよう指導することが大切です。

 

ボールだと判断し見送ったがストライクだった

一番多いケースです。これは、以下のように分類できます。

あきらかなボールなのに審判がストライクと判定した

審判の判定は絶対ですので、いくら選手がボールと判断しても、審判がストライクと言えばストライクです。当然、ストライクと言われた選手やチームメイトはおろか、監督も頭に来るでしょう。

こんなとき、指導者が審判に文句を言えないはけ口として、選手に当たるのは論外であり、指導者失格です。一番悔しいのは選手ですし、その気持ちを理解してあげなくてはいけません。

きわどいボールだったが、選手はストライクだと判断しなかった

最も多いケースがこれです。原因は打者が感じているストライクゾーンと、実際のストライクゾーンが違っていることです。

ボール・ストライクの見極めに関しては、普段の練習からストライクゾーンを意識する必要があります。さらに言えば、追い込まれた状態でのバッティング練習も必要です。

指導者は自分が怒る前に、普段からそのような練習を実行していますか?

何気なく打撃練習をさせていませんか?

練習で出来ないこと、練習しないことは、試合では絶対出来ません!

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見逃し三振をしかる弊害は大きい

指導者が選手に成長を望むなら見逃し三振を怒ったり、叱ったりしてはいけません

怒ったり、叱ったりするのは、課題が明らかになっている選手が、克服する練習を怠ったときです!

安易に見逃し三振を怒ったり、叱ったりすると大きな弊害があるんです。

 

早いカウントから難しいボールを打つようになる

選手は誰でも怒られたくありません。でもスキルを上げることは簡単ではありませんよね?だから楽に回避する方法を思いつくんですよ。

それは早いカウントから打てばいい!と考えてしまうことです!

見逃し三振が起こる状況を作らなければ、見逃し三振をしませんからね。でも、選手の打撃能力は向上しません。なぜなら、余裕のあるカウントから難しい球を打ちにいくようになるからです。

通常、打者は1打席で2回まではストライクを見逃せます。つまり甘い球を狙う場合、3球はチャンスがあるはずなんです。

見逃し三振を怖がるようになると、追い込まれたくありませんから、その余裕がありません。その結果、打者有利なカウントにもかかわらず、打つ必要の無い難しい球を打ってしまうのです。

 

最大の弊害は選手が成長しないこと

このように見逃し三振を叱っても上達しませんし、むしろ下手にさえなります。

よく、こんなことを言う人がいます。

振らなければ何も起こらないだろ!

しかし、無理に難しいボールを振ることで生じる弊害も考えて頂きたいと思います。

バットに当てさえすれば、何が起こるか分からないだろ!

という言葉もよく耳にしますが、野球のレベルが上がれば上がるほど、何かが起こる可能性が低くなります。

そんな小さな期待のために選手の成長を妨げることは、私には到底理解出来ませんね。

 

私が現役の頃、こうしたバッティングを繰り返す選手を多く見てきました。特にレギュラーになりきれない選手は、監督から評価されたいので、評価を落とす『見逃し三振』を嫌う傾向にあったんです。

だから初球から難しい球を打って簡単にアウトになるんですよね。自分の得意な球種やコースをじっくり待てないんですよ。

結果としてレギュラーは遠のいてしまう。練習で打てても、本番で力を発揮できない典型的な例です。

 

選手を追い込むこともある

見逃し三振を必要以上に恐れて安易に難しい球を打ち、凡打に終ったことを指導者が怒ったりすればどうなるでしょうか?見逃し三振をする状況を避けても怒られ、見逃し三振をしても怒られる・・・

そんな選手は徐々に追い詰められていきます。

指導者によっては、『このような困難な状況を打破できなけば成長しない』と考える人も多くいます。でも私はそう思いません。

・追い詰められた選手は逃げたくなる

・徐々に出せに入ることが怖くなる

・いずれ野球が嫌いになる

 

別に楽しんでやれとは言いません。むしろ厳しさの中に成功があって楽しくなると思っています。

しかし、技量が足らない人を追い込んでも成長はしませんし、成長を促すにはそれなりのプロセスが必要になります。指導者は選手の課題をいち早く見つけ、克服する環境を整えてあげるのが役目です。

私は、指導者が見逃し三振した選手を叱っている姿を見ると、空しい気持ちになってしまいます。

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