野球の試合ではマウンドに選手や監督、コーチが集まることがあります。
このような場面は、基本的に ”守備側がピンチ・攻撃側がチャンス” ですから、その後の試合展開を左右する場面として印象に残りやすいですよね。
この『監督、コーチがマウンドに行く』行為ですが、ちゃんとルールがあります。
この記事では監督、コーチがマウンドに行ける回数、およびそのルールを解説するとともに、以下の疑問についてお答えしようと思います。
- 監督、コーチがマウンドに行くルールとは?
- キャッチャーが行く場合はマウンドに集まったとカウントするのか?
- 監督、コーチがマウンドに行ける回数は?高校野球やプロ野球、メジャーで違いはあるのか?
- 他のアマチュア野球や草野球はどんなルールなのか?
監督、コーチがマウンドに行くルールとは?
監督、コーチがマウンドに行くルールは、公認野球規則に規定されています。
以下が公認野球規則に記載されてるルールです。
公認野球規則で規定している『監督、コーチがマウンドに行くルール』を要約すると以下のようになります。
- 公認野球規則で規定しているのはプロ野球・メジャーリーグである
- アマチュア野球は各連盟の定めた規定に従う
- プロ野球では『1イニングに同一投手のもとへ行ける回数』を規定している
高校野球、プロ野球、メジャーリーグ、その他のアマチュア野球において、監督、コーチがマウンドに行ける回数に違いがあるのは、基本的に各連盟の定めた規定に従うためなんですね。
「高校野球」で監督、コーチがマウンドに行ける回数
高校野球では、高校野球特別規則に規定されています。
高校野球特別規則
14.監督またはコーチが、マウンド上の投手のもとへ行く回数規制
監督またはコーチが、マウンド上の投手のもとへ行く回数を規制した規則5.10(ℓ)は、高校野球では、試合中監督はグラウンドへ出ることができないと定められているので適用しない。
<引用> 高校野球特別規則(2019年版)
これにより、高校野球では監督、コーチがマウンドに行ける回数は 0回 となります。
その代わり、監督の指示を伝える『伝令』があり、これについてルールがあります。
要約すると以下のようになります。
< 高校野球の場合 >
- 伝令がマウンドに行ける回数は、1試合に3回まで
- 延長戦になった場合、1イニングにつき1回まで
- 伝令は、審判員が ”タイム” を宣告してから30秒以内まで
- 内野手(捕手を含む)が2人以上マウンドに行った場合は、1回にカウントする
キャッチャーが1人でマウンドに行った場合は、マウンドに行った回数としてカウントされません。
サインの確認や、ピッチャーに声をかけにキャッチャーがマウンドに行くことがありますが、他の内野手は迂闊に近づいてはいけません。
貴重な『マウンドに行ける回数』を消費してしまいますからね。
「プロ野球」で監督、コーチがマウンドに行ける回数
日本のプロ野球では、公認野球規則5.10(ℓ)に規定されており、以下の内容になっています。
< プロ野球の場合 >
- 1イニングに同一投手のもとへ行ける回数は1回まで
- 1イニングに同一投手のもとへ2回行った場合、投手交代しなければならない
高校野球とは違い、公認野球規則では1試合で監督、コーチがマウンドに行ける回数については規定がありません。
ただし、プロ野球の場合は『アグリーメント』という規約・協定が存在します。
以前はアグリーメントを一般公開していたのですが、現在は非公開になっており、具体的なルールは知り得ないのです。
一般公開されていたとき、セ・リーグのアグリーメントで
「試合のスピードアップに関する6球団申し合わせ事項」
バッテリーの打ち合わせで捕手が(単独で)マウンドに行く回数を1試合で3回までとする
となっていました。
このアグリーメントが現在も同様の運営をされているのか、変更があったのか、一般公開されていないので分からないのです。
同様に、1試合で監督、コーチがマウンドに行ける回数について、アグリーメントで規定しているかもしれません。
いずれにせよ、一般公開されていない以上分かりません。
アグリーメントとは?
プロ野球組織の構成、及び運営の細目を定める目的で存在している『日本プロフェッショナル野球協約(通称:野球協約)』。いわば、日本球界の”憲法” とされているものです。
これまで取り上げてきた『公認野球規則』は、競技上の基本的なルールが記されており、プロ・アマで統一された内容となっています。
これらの中間的な位置づけにあるのが『アグリーメント』と言われる規則であり、セ・パ各リーグが定めている共通見解といえるものです。
セ・リーグとパ・リーグで、微妙にルールが違うことがあるのは、このアグリーメントの内容が違うためなんですね。
例えば・・・1990年~2010年の回数(イニング)・時間制限について。
セ・リーグ | パ・リーグ | |
1990年 | ・延長15回まで
・時間制限なし ・引き分け再試合 |
・延長12回まで
・時間制限あり |
1994年 | ・延長12回まで
・時間制限なし |
|
2001年 | ・延長12回まで
・時間制限なし |
|
2010年 |
これだけ見ても、引き分けのなりやすさに違いがあり、セ・リーグとパ・リーグで異なるルールを採用していることが分かると思います。
これはほんの一例で、DH(指名打者)制や、プレーオフ制度など、様々なものがあります。
「メジャーリーグ」で監督、コーチがマウンドに行ける回数
メジャーリーグでは、公認野球規則5.10(m)に規定されており、以下の内容になっています。
要約すると以下のようになります。
< メジャーリーグの場合 >
- 監督、コーチがマウンドに行ける回数は1試合に6回まで
- 延長戦になった場合、1イニングにつき1回まで
- 野手が投手と話すためにマウンドに行った場合、1回とカウントされる
- 捕手がサインの確認でマウンドに行った場合、1回とカウントされる
1試合で6回マウンドに行くことが許されており、一見すると多く感じるかもしれませんが、野手や捕手がマウンドに行っただけで1回とカウントされますので、厳しいルールだと思います。
要は、『必要な話なら堂々とマウンドに行けばよいし、必要のないことであればマウンドに行くな』ということなんでしょうね。
「社会人野球」「大学野球」で監督、コーチがマウンドに行ける回数
社会人野球および大学野球では、社会人及び大学野球における試合のスピードアップに関する特別規則により規定されており、以下の内容になっています。
要約すると以下のようになります。
< 社会人野球、大学野球の場合 >
- 監督、コーチがマウンドに行ける回数は1試合に3回まで
- 延長戦になった場合、1イニングにつき1回まで
- 監督、コーチがマウンドに行った場合、45秒以内に打ち合わせを終了すること
- 内野手(捕手を含む)が投手のもとへに行ける回数は、1イニングにつき1回1人だけ
監督、コーチがマウンドに行ける回数と内野手(捕手を含む)が投手のもとへ行ける回数を区別しています。
これにより、捕手や内野手は安易に投手のもとへは行けません。
高校野球では、捕手や内野手が一人で投手のもとへ行く回数に制限はありませんから、それに比べて厳しいと言えますね。
「その他のアマチュア野球」「草野球」で監督、コーチがマウンドに行ける回数
その他のアマチュア野球や草野球の場合、公認野球規則により各連盟または所属する団体の規定を適用することになっています。
場合によっては、参加する大会や本戦・予選でルールが異なることもありますので、注意が必要です。
まとめ
いかがでしたか?
監督、コーチがマウンドに行ける回数はリーグや連盟により違いがあります。しかし、共通しているのは『試合のスピードアップを目的にしている』ことです。
私が高校球児の頃(キャッチャーでした)、野手がマウンドに行く回数に制限が無かったと記憶しています。それゆえ『ピンチの時には必ずマウンドに集まれ!』と指導されました。
例えばノーアウト1・3塁のピンチを迎えた場合、
- どんな守備フォーメーションをとるのか?
- 一塁ランナーの盗塁に対しどんな対応をするのか?
など、内野手の意思を統一するため、よくマウンドに集まったものです。
しかし試合進行の妨げにもなりますので、球審の方に『早く!』と言われることも・・・(汗)
しつこい球審だと、私(キャッチャー)がマウンドからキャッチャーボックスに戻った後でも
キャッチャー遅いよ、もっと早く!
とボソボソと愚痴を言われたものです(笑)
しかし、公式戦で守備フォーメーションの確認を怠ったせいで余計な失点をしたり、それが原因で負けてしまうなら、多少審判に愚痴を言われた方がマシですし、多くのチームは同じような考え方だったと思います。
だからこそ、厳密なルールが作られて試合のスピードが改善されてきたのでしょう。
そして、この流れは今後も進むと思われますし、それにより観客はもっと快適に野球観戦ができるようになると思います。
マウンドに行ける回数 | |
高校野球 | 0回(伝令は3回) |
プロ野球 | 不明 ※1 |
メジャー | 6回 |
社会人野球 | 3回 |
大学野球 | 3回 |
その他 | 所属連盟が定めた規定数 |
※1 アグリーメントにより規定されている可能性がある。しかし一般公開されていないため不明。
カウントの対象 | |
高校野球 | 伝令・野手が2人以上 |
プロ野球 | 不明 ※1 |
メジャー | 監督・コーチ・野手 |
社会人野球 | 監督・コーチ ※2 |
大学野球 | 監督・コーチ ※2 |
その他 | 所属連盟が定めた定義 |
※1 アグリーメントにより規定されている可能性がある。しかし一般公開されていないため不明。
※2 「内野手(捕手を含む)が投手のもとへ行ける回数は、1イニングにつき1回1人だけ」という規定もある。