以前、ネットニュースで元プロ野球選手が野球選手の素質について語っている記事がありました。
大抵この手の記事は中身が無いことが多いので(笑)、さらっと読んでしまうのですが、あまりに内容が酷く、野球に対して見識が狭いので、逆に驚きました。
この記事では『野球選手は素質が全てなのか?』について、掘り下げて考えてみます。
元プロ野球選手が語った「野球選手の素質」
この方は現在ボーイズリーグに所属しているチームの会長を勤められています。さらに、このチームの監督を担当している方も元プロ野球選手だった人です。
実績からすれば、野球に長く携わっている方々であり、野球エリートと言っていいでしょう。そんな彼らが主張する内容を要約すると以下の通りです。
彼らの主張
投手になれる素質があるかないかは、マウンドで投げさせたときの雰囲気、キャッチボールをしているときの身のこなし、そんな身体の使い方すべてを含めたセンスで分かる。
センスがあるかないかは、小学生でもキャッチボールとバットスイングを見れば大体わかりますね。
プロに行けるかまではともかくとして、強豪高校でやれるようになるかどうかぐらいは。
小学生のキャッチボールってあとから教えられた技術じゃなく、生まれつきの素質でやってるでしょ。
メチャクチャな子は本当にメチャクチャだけど、逆にセンスのいい子だったらすぐわかるんです。
投手をやれる子は何も教えられなくても、生まれつきコントロールが優れている。
ストライクは取ろうとしなくても自然と取れちゃう。だから、投手をやるわけですよ。
引用元:講談社
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51555
センスは生まれつきですか?
上で挙げた話は、居酒屋で野球好きのおっさんが話している訳ではありません!
仮にもプロ野球を経験した現役の指導者が語っていることなんです!
まぁ、よくこんな酷い内容を堂々と語れるものだと呆れます・・・
でも、このような狭い見識しか持ち合わせていない指導者って結構多いんですよ。そもそも、技術的なことを習得する過程で
・センス
・生まれつき~
といった単語をよく使う人は、たいしたことの無い人間が多いです。彼らのように、どうやったら『センス』が身に付くかを考えていませんからね。
まぁ、『センス=生まれつき』と言っているようなものなので、技術的なことを掘り下げ、合理的な動作とは何かを考察する習慣が無いんでしょうけど。
だから、彼らもプロ野球という世界では、超一流の選手に上り詰めることが出来なかったのでしょう。
名選手だからと言って名指導者とは限らない
よくプロ野球界では、『名選手、名監督にあらず』と言われます。同様に、名選手だからと言って名指導者とは限りません。
プロ野球経験者、甲子園経験者だからと言って合理的な動作を理解している訳ではないんです。
確かに、こういった人達は現役時代に、多少なりと優れた成績を残したわけですから、結果的に合理的な動作が出来ていた可能性は高いでしょう。
ただ、それは頭で理解して訳じゃなく、偶然できていたケースが多いんじゃないかなぁと思うんです。
だから、自分が出来た動作を他人が出来ないことが理解出来ない。人に技術を教えることなんか出来なくても当然です。
このような人達は高いレベルの野球を経験していますので、上手な選手を沢山見ています。だから何となく視覚的に『誰が上手で、誰が下手か』が分かる。
でも、それは技術的に理解してるわけではありません。冒頭に記載した彼らの主張には技術的な根拠が一切無いことが証拠です。
挙句の果てに、技術的に無知なことを『センス』という言葉で片付け、ごまかすんですよ。
「指導」できない指導者は必要ない!
彼らの言う、『センス=生まれつき』だとすれば、指導者は何をすべきなんでしょうか。
・センスの無い子に野球を諦めさせるのでしょうか?
・センスのある人だけが甲子園やプロ野球を目指すんでしょうか?
そもそも指導者がこんな事を言うなんて論外ですし、少なくとも『指導』者じゃないですね。だって指導出来ないんですから。
彼らの言う『センスの無い子』とは、合理的な体の使い方が出来ていないことを差すんです。
合理的な動作とは?
合理的な動作を身につけるにはどんな練習が効果的か?
本来はそのようなことを掘り下げて考え、実際に身に付くように導いてやる役目が指導者のはずです。
どんな世界もそうかもしれませんが、立場の高い人間、影響力がある人間が発する言葉がまかり通ることは多いです。でも物事の確信をついているとは限らない。
だからこそ、影響力のある人ほど言動に気をつけてもらいたいと思いますし、そのことを理解して欲しいと思います。
野球をやっている子供たちは、みんなプロ野球に進みたいわけじゃありません。それでも野球が上手くなりたいと思っている人は多いのです。
素質なんかより大事なもの
指導者の役割は以下のことを実現するために、サポートすることです。
・多くの練習や努力を積み重ね、少しでも上手くなったり成功体験をつませる。
・その結果が自信となり、長い人生の糧になる。
・そして野球を通じて、人として成長する。
野球では『素質のある人』『センスのある人』とは、以下のような人を指すことが多いです。
素質・センスがある人
教えていないことを難なくこなす
一回教えただけで、技術を習得する
しかし、彼らの言う『素質のある人』『センスのある人』は、本質を理解せずに、見よう見まねでコピーしているだけですので、本当に身についた技術だとは限らないんですね。
以下の記事にも書いたのですが、こういった選手は技術的な壁にぶつかる(思うような成績を残せない)と、解決方法が全く分からなくなるんです。
本当に凄い人って、技術を習得するまで血の滲むような努力をするんですよね。頭で考え、理解し、出来るようになるまで努力を重ねる。だから、一度身についた技術は本物なんです。
そして壁にぶち当たっても、
・何が原因なのか?
・どのような練習が必要なのか?
を自分で解決できる強みが備わるんですね。
指導者は自身の経験や、勉強で学んだことを通じて、努力の必要性を説き、努力の方法を教えてやって欲しいと思います。
センスがあるとか、センスがないとか、指導者が口にする言葉ではないと私は思うんですけどね。